2016 Fiscal Year Research-status Report
キャリア初期および中期のデベロップメンタル・ネットワークの構築に関する実証研究
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15K03708
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
坂本 理郎 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (40449864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 久美子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (90437450)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デベロップメンタル・ネットワーク / メンタリング / 関係性アプローチ / 職務特性 / OJT / キャリア初期 / 造船業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、当初計画を変更し、造船業A社およびB社の若手従業員を対象とした定量的調査を実施した。これは、過去にA社で実施した探索的な定性的調査(科研費助成事業:基盤研究C:課題番号24530509)および平成27年度に本事業でB社で実施した定性的調査の分析結果から得られた仮説を検証することを目的としている。具体的には、以下の仮説①および②である。これら2つの仮説に、先行研究のレビューの結果を基に仮説③を加えた。 ①職務特性(タスク多様性・チームワーク)は、DNの構造特性(人数・多様性・強さ)に対して正の影響を与える。(A社およびB社での探索的調査の結果から、タスク多様性はDNの人数および多様性に、チームワークはDNの人数および強さに影響すると考えられる。) ②DNの構造特性(人数・多様性・強さ)は、DNの機能特性の提供量および多様性に対して正の影響を与える。 ③プロテジェの性格(外向性・開放性・協調性)は、DNの構造特性(人数・多様性・強さ)に対して正の影響を与える。 質問紙調査で得られたデータを用いて共分散構造分析を行った結果、①および②は概ね支持された一方で、③はその一部のみが支持された。以上の結果は整理統合されて論文化し、日本労務学会誌に投稿した。(A社で実施した定性的調査の結果は既に平成27年度中に日本人材育成学会誌に投稿し、平成28年度に採択が決定、平成29年度8月に刊行される予定である。また、A社およびB社での定性的調査の結果を比較分析した論文も執筆済である。)職務特性がDNの構造特性に対して影響し、さららにそれがDN機能特性に対して影響を及ぼすという因果関係が検証されたことによって、職務設計を通じたDNのマネジメント可能性を示唆することができるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画ではキャリア中期(30~40代)にある従業員を対象とした探索的調査を新たに行う予定であったが、キャリア初期にある若手従業員を対象とした調査・研究から得られた仮説を検証することを優先したために、計画を変更した。ただし、調査対象者の中には入社10年を超え既に役職に就いている者も含まれており、一部の中期キャリアの者のデータも獲得することはできている。ただし今年度は、キャリア初期の若手従業員のDNに関する仮説の検証および成果の報告などに労力を割いたため、キャリア中期に関するデータの分析は滞っている。その点から進捗状況を勘案すれば、「やや遅れている」ということになる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、キャリア初期の若手従業員を対象とした定量的調査の結果は概ね仮説を支持するものであったが、一方で未だ潜在している要因が若手従業員のDN構築に影響している可能性が示唆された。先行研究(坂本・西尾, 2013)の知見から、上司の関わり行動がその要因の有力な候補の1つである。今後あらためて定性的調査におけるデータを見直し、この点に関する仮説を検討したい。 また、これまでの定性的および定量的調査を通じて得られた中期キャリアの従業員から得られたデータについても分析を行い、初期キャリアの若手従業員のDN特性との比較分析を行うつもりである。このように既に得られているデータを活用できるため、調査協力企業にかける負担や研究者自身の時間的・資源的制約も鑑みて、中期キャリアを対象とした調査を新たには実施しないこととした。
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Causes of Carryover |
当初計画では購入予定であった質的データ分析ソフト「MAX-QDA」の購入を見送ったことや、調査のための出張を集中的・効率的に行うことができたことが影響したと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度は見送ったが、WindowsおよびMacいずれのOSでも互換性高く使用できる新しいバージョンのMAX-QDAを購入する。その他、調査または学会発表等を目的とした出張旅費にも充てたい。
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