2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03732
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
奥瀬 喜之 専修大学, 商学部, 教授 (30312440)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 消費者行動 / 参照価格 / マーケティング / 端数価格 / 購買意図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本市場における端数価格が消費者の選好及び購買意図に及ぼす影響に関して、ウェブ調査による実験を行った。特に本年度は、Strahilevitz and Myers(1998)が提唱した、快楽的消費と功利的消費という観点から、端数価格の影響について検討した。このような観点からの分析は当初の研究計画には含まれていなかったが、有力な影響要因の1つとみられるにもかかわらず、同観点から研究した2つの先行研究において全く逆の実証結果が得られていたため、本研究では再検証を目的として実験を行った。本研究では、先行研究のWadhwa and Zhang(2015)の実験計画を踏襲した実験を行った結果、端数価格は功利的製品においては影響を及ぼさないが、快楽的製品においては購買意図に影響を及ぼすことが示された。支払意思額(Willingness to Pay)においても、快楽的製品の場合に高くなり、端数価格が快楽的製品においては有効な価格戦略となりうることが示唆された。また、ちょうどの価格を少し超える端数価格について検討したところ、選好や購買意図に及ぼす影響は確認されなかった。 端数価格効果については海外での数多くの実証研究が報告されているが、日本の消費財市場を対象とした端数価格による効果を検討した研究は皆無であり、本研究はその嚆矢となる。また、消費税率の引き上げ以降、ちょうどの価格を少し超える端数価格を目にする機会が増えたが、そのような端数価格が購買行動を含む消費者行動に及ぼす影響を検討した点は、実務的な観点からも意義があるといえる。 また本年度は、端数価格効果について検討したStiving and Winer (1997)を参考にして、質問紙調査によって収集されたPSMデータを用いたロジスティック回帰分析による検証も行った。今後、購買履歴データを用いた追加的な分析を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、製品特性(功利的製品と快楽的製品)の違いと目標(功利的目標と快楽的目標)の違いが端数価格効果の発生に及ぼす影響の検討を主眼とした実証研究を行った。当初の研究計画では、複数の製品カテゴリーを対象とした調査をふまえて、端数価格効果が生じやすい製品カテゴリー、生じにくい製品カテゴリーの抽出を行う計画であった。しかしながら、研究実績の概要にも示したとおり、功利的消費と快楽的消費という観点から端数価格の効果を検討した、近年の複数の先行研究間で一致した見解が得られていなかったため、優先検討事項を変更して、本事項についての実験的な調査を行った。 本年度の研究成果は、学会発表の欄に示すとおり、国内外の学会において研究報告の形式で公表した。次年度は本年度の研究成果に関する追加的な実証研究を行い、国内外の学会における研究報告を行うと同時に論文として完成させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下の3点がある。 1点目は、前年度の研究成果に関する追加的な分析である。現在までの進捗状況に示したとおり、追加的な調査によって前年度の研究成果を支持する実証的論拠を確保して、論文として公表する。 2点目は、端数価格効果が生じる状況要因についての検討である。本年度検討した快楽的消費と功利的消費という観点からの検討を含め、どのような条件下において端数価格効果が生じるのかを明らかにするために、影響する状況要因について検討する。 3点目は、端数価格効果が発生するメカニズムについての検討である。先行研究でも端数価格効果発生のメカニズムについての説明が試みられてきたが、統一した見解は得られていない。先行研究における知見も踏まえて、端数価格効果発生のメカニズムについて理論的に考察した上で、その妥当性について検証する。 これらの研究成果については随時、学会報告並びに論文として公表すると同時に、申請者のウェブサイトでも公開していく。
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Causes of Carryover |
研究成果報告のための国際学会参加にかかる渡航費に関して、所属機関の国際学会渡航費補助制度を活用でき、当初予定額よりも大幅な削減が可能となったため。また、ウェブ調査に関して、調査対象製品カテゴリーを減らしたことで当初予定額よりも削減できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際共同研究への発展を視座に入れ、次年度以降、研究成果報告及び情報収集のための海外国際学会への参加頻度を高めたいと考えている。剰余額はその際の海外渡航費として活用する。
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Remarks |
本Webページ内に本研究課題の研究内容及び研究成果を紹介するページを作成している。
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Research Products
(17 results)