2016 Fiscal Year Research-status Report
ベイズ統計学的枠組みによる理解社会学と意味システム論の再構築
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15K03813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 俊樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10221285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 理解社会学 / ベイズ統計学 / 意味システム論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は当初の計画にしたがい、ベイズ統計学の枠組みと理解社会学の方法論の同型性をより明確にしていった。行為の意味の不確定性を変数(「k」と仮になずけた) としてあつかうことによって、意味の幅をベイズ統計学での母数の事前分布および事後分布に対応されることができる。それによって、意味を幅としてあつかっても、論理的な整合性をたもてることを示すことができた。 そうした研究の成果は「自己産出系のセマンティクス」「意味と他者」「意味と数理」などの題名の下で専門的な論文や解説の形にまとめつつあり、複数の媒体を通じて、複数の分野の多様な水準の読者に届くように準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の大きな成果としては、『書斎の窓』(有斐閣)誌上において、M・ウェーバーの社会学における方法論の展開を再検討する連載をはじめた。ウェーバーの方法論は特に日本語圏では、H・リッカートの文化科学Kulturwissenschaftの延長線上で理解されることが圧倒的に多かったが、上記連載では1904年のいわゆる「『客観性』論文」ではたしかに文化科学の構想に依拠した方法論が述べられているが、その後、新たな術語系が導入されること、そしてその術語系は当時のドイツ語圏の数理的統計学を代表する研究者であるJ・フォン・クリースのものであることを、明らかにした。 現在の頻度主義の統計学は、F・A・フィッシャーら、20世紀初頭のイングランドの生物統計学派によって確立されたものである。それ以前の統計学は多かれ少なかれベイズ統計学の考え方をつかっており、フォン・クリースもまたそうである。そのフォン・クリースの術語系をウェーバーが自らの社会学方法論として導入したことは、理解社会学がその成立当初からベイズ統計学と内在的な関連性をもつことを、学説史からも裏付けるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の計画を上回る速度で進んでいる。特に大きな支障はない。成果を発表する媒体は単著以外のものが多いため、他の共著者の原稿未提出などによって公刊が遅れてしまうことが少なくない。その点が現在のところ、一番大きな問題になっているが、これについてはその性質上、抜本的な解決が存在しない。二次的な対応策として、公刊が数年単位で遅れそうなものに関しては、その内容をカヴァーできる別の論文を作成し、他の媒体でより早期に公刊できるように努力をつづけている。
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Causes of Carryover |
購入予定だったいくつかの書籍の刊行がおくれたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
刊行をまって購入する
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Research Products
(9 results)