2015 Fiscal Year Research-status Report
南アジア系移民企業家と移民システムのエスニック集団別特徴に関する社会学的研究
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15K03837
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福田 友子 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (40584850)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / 移民研究 / 中古車 / 中古部品 / ハラール食品 / インド料理 / イスラーム / 南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目(2015年度)は、文献調査、国内調査を中心に行った。 文献調査については、新たな研究課題を始めるにあたり、文献や資料を広く浅く読み進めることを心掛けた。社会学やエリア・スタディーズ(イスラーム研究を含む)だけでなく、たとえば環境科学分野の書籍も併せて読むことで、移民企業家が積極的に参入する中古品リユース・リサイクル産業の相対的位置づけを検討した。 国内調査については、千葉県内を中心に調査を実施した。第1に、千葉県内の複数のイスラーム団体の訪問調査(継続1件、新規2件)およびフィールド・ワークを実施した。第2に、千葉県内を中心にハラール食品産業に関する調査を実施した。ハラール食品産業は「インバウンド/アウトバウンド」という観光産業の文脈で近年注目を集めているテーマである。20年前の調査開始時点と比較して、その位置づけには隔世の感がある。幕張で開催されたジャパン・ハラール・エキスポ2015における出店企業(移民企業も日本企業も含む)や行政窓口へのヒアリングから、問題の多面性や複層性が浮き彫りとなった。第3に、文部科学省/千葉大学の「地(知)の拠点整備事業」と連携し、地域の多文化・多民族共生に関する研究を進めた。これまであまり注目してこなかった「移民の言語使用」や第二世代の若者の抱える課題について検討する機会を得たことは、本研究課題の位置づけを明確化させる上で効果的であった。 学会報告では、主に2014年度までの研究成果について報告したのだが、中でも理系の学会(精密工学会ライフサイクルエンジニアリング(LCE)専門委員会公開ワークショップ)で報告する機会を得たことは貴重な経験となった。理系研究者との意見交換の中で中古品産業に内在する「差別/偏見」に関する指摘を受けたことで、問題構造を再認識でき、社会学が移民研究において果たすべき役割を捉え直す機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述の通り、新たな研究課題を始めるにあたり、1年目(2015年度)は文献調査と国内調査を中心に研究を行った。文献調査については、比較的入手しやすい文献や資料を中心に、広く浅く読み進める方針を取ったため、入手しにくい高価な資料等の収集は次年度以降に持ち越すこととなった。国内調査については、千葉県内の近隣地域から調査をスタートしたため、結果として旅費等の経費は最小限に抑えることができた。さらに時間的制約から、計画段階で予定していた海外での研究打ち合わせを実施できなかったため、そうした海外出張旅費も次年度以降に持ち越すこととなった。 文献調査、国内調査、学会報告、論文執筆など、一連の研究活動は概ね順調に進めることができたと考えている。しかしながら、本研究課題にとって重要な海外での研究打ち合わせを次年度以降に延期したことは重大な変更であった。その点を考慮して、総合的に「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目(2016年度)は、まず千葉県内を中心とした国内調査を継続する。同時進行で、2017年3~4月頃の書籍刊行を目指し、論文執筆(主に改稿作業)を計画的に進める。海外調査については、7~8月にアメリカで調査を実施する。今回は調査協力者の紹介により、西部(カリフォルニア州他)で南アジア系コミュニティのフィールド調査を行う予定である。2011年と2014年の東部(ニューヨーク近郊)調査で得た知見との比較が期待される。さらに12月にはニュージーランドで、ハラール食品産業に関する国際学術会議が開催される。報告申込が採択されれば、同会議で成果報告することができるので、併せて現地調査も実施したい。同報告が採択されなかった場合は、1年目に実施できなかった海外研究協力者との研究打ち合わせを実現させ、併せて共同調査も実施したいと考えている。 3年目(2017年度)以降については、現時点で未定の部分が大きい。本務校の許可が下りれば 2017年度後半から2018年度前半にかけて、ニュージーランドで長期研究調査を実施したいと考えている。この申請が認められた場合、2017年度前半はその準備、2018年度後半はその研究成果をまとめ上げる作業が本研究課題の中心となるであろう。
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Causes of Carryover |
前述の通り、新たな研究課題を始めるにあたり、文献調査については比較的入手しやすい文献や資料を中心に広く浅く収集する方針を取ったため、書籍購入も安価な資料等の入手にとどまった。また国内調査については、千葉県内の近隣地域から調査をスタートしたため、結果として旅費等の経費は最小限となった。さらに時間的制約から、計画段階で予定していた海外での研究打ち合わせを実施できなかったため、そうした海外出張旅費も次年度以降に持ち越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題においては、国内および海外での現地調査が最も重要であることから、経費の多くを旅費にあてる。2年目(2016年度)は、夏と冬の計2回の海外出張を計画しているので、1年目の未使用額については、まずはこうした海外出張旅費にあてる。また洋書をはじめとする入手しにくい高価な資料等の収集については、できるだけ海外出張のタイミングに合わせて入手を試みる。時間的にも集中して、必要な資料を収集できるよう努力する。また海外調査では現地コーディネーター兼通訳の人件費・謝金支払いが必須であるため、その経費もかかる。国内出張旅費については、京都府、愛知県、北海道、富山県他で開催される学会、研究会、調査への参加を予定しており、そうした旅費にも充当する。さらに研究成果を英語で発表するため、英文校閲費と資料翻訳費を謝金として支出する予定である。
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