2017 Fiscal Year Research-status Report
南アジア系移民企業家と移民システムのエスニック集団別特徴に関する社会学的研究
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15K03837
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福田 友子 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (40584850)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会学 / 移民研究 / 中古車 / 中古部品 / ハラール食品 / インド料理 / イスラーム / 南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目(2017年度)は、7月から在外研究でニュージーランドのオークランドに滞在することになったため、オークランドでの現地調査が研究の中心となった。 オークランドは世界有数の多文化・多民族都市である。一般的に中国系、インド系、太平洋島嶼国系が移民の三大グループと認識されている。移民の集積地域は一か所に固定しておらず、市内各所に多数存在し、かつ分散立地している。そこで移民コミュニティの中でもインド系(南アジア系)移民の集住が顕著とされる地域を選び、その地域で参与観察を行った。一つの地域にほぼ毎日通い、人々の日常生活を観察し続けたことで、貴重な社会学的データを得ることができた。 また前述の通り、オークランドには太平洋島嶼国系移民が多数居住しており、その社会的存在感は大きい。加えてニュージーランドと周辺の太平洋島嶼国の経済的結びつきは強く、これらを同一経済圏と捉えることもできる。そこで在外研究中に近隣の太平洋島嶼国の調査を追加することを考え、3月にトンガ調査を実施した。 文献調査については、4~7月に本研究課題とニュージーランド及び太平洋島嶼地域に関連する書籍を日本で入手し、事前準備を進めた。また7月のニュージーランド移動後は、オークランド大学日本研究センターの客員研究員として同大学の図書館を利用できたので、その蔵書の中から本研究課題に関連するものを収集した。また大学図書館の論文ダウンロードサービスも利用できたので、関連論文のPDFデータを入手した。 国内調査については、5月に兵庫県三木市周辺で中古部品販売業者に関する現地調査を実施した。共同研究者に調査協力者を紹介してもらい、単独調査という形で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年目(2017年度)は、海外調査を中心に、国内調査、文献調査、書籍刊行、学会報告、論文執筆など、一連の研究活動をおおむね順調に進めることができたと考えている。 とりわけ6月に共著書を刊行したことで、中古品リユース・リサイクル業界に関する過去数年間の研究成果を整理・総括することができた。また同業界における南アジア系移民企業家の位置づけに関しては、問題の構図や分析枠組みの一部を提示することができたと認識している。一方で客観的立場の第三者(読者)からコメントや批判を受けたことで、新たな研究課題を発見し、研究の今後の方向性について再考する機会を得た。 学会報告については、在外研究中ということもあり積極的には参加しなかったが、1月にシンガポール国立大学で開催された難民問題に関する国際シンポジウムに参加し研究報告した。本研究課題で検討を続けてきた、難民問題とエスニック・ビジネス研究の接合について問題提起したところ、政治学や歴史学等の専門分野の異なる研究者から多数のフィードバックを得ることができ、有意義な機会となった。また追加的に、シンガポールの移民コミュニティに関する予備的調査も実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
4年目(2018年度)は、7月にニュージーランドの在外研究が終わるので、それまでにオークランド調査で得たデータを整理し、オークランド大学等の研究者と意見交換する予定である。 8月以降は、データが不足する部分を補うため、まずは日本国内での調査を追加する。さらに本研究課題の最終総括に向けて、研究の全体像を見直す。当初の計画で予定していた、パキスタン、バングラデシュ等の送出国側調査を実施できていない点については、その対応策を検討中である。現時点では、日本とニュージーランドの移民コミュニティを比較する形で、研究の総括を進めることを考えている。 また在外研究終了直前の7月上旬には、シンガポールで国際学会に参加することが決まっている。テーマは東アジアの宗教であり、日本のイスラーム社会について研究発表する。併せてシンガポールでの現地調査も実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
3年目(2017年度)の途中から1年間の在外研究が始まったこともあり、当初計画していた海外出張の一部(カナダ、チリでの現地調査、カナダでの国際学会参加)を取りやめた。その旅費分が繰越金となった。また在外研究中の文献・資料収集については、オークランド大学図書館を利用できたので、英語文献を急いで購入する必要がなかった。 4年目(2018年度)の7月に在外研究が終了するので、その前に英語文献をまとめて購入する予定である。また7月以降、不足している国内調査や海外調査等を順次実施するので、繰越金の大部分についてはその旅費に充当する。
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Research Products
(7 results)