2015 Fiscal Year Research-status Report
地域社会における祭礼・芸能の変容と住民/他出者/外部参加者の関係性に関する研究
Project/Area Number |
15K03852
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
武田 俊輔 滋賀県立大学, 人間文化学部, 講師 (10398365)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 祭礼 / 民俗芸能 / 他出者 / 映像メディア / 祭礼組織のコンフリクト / 祭礼の資金調達 / 社会的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代日本社会における「伝統的」とされる祭礼とその担い手集団について、戦後における地域の階層構造の変化や近年の人口減少を背景としつつ、それまでなかった他出者や女子の祭礼・芸能への参加、外部からの新規参入、観光客誘致、文化財行政やユネスコ無形文化遺産指定といった社会的な価値づけ、また祭礼への外部からの視線に対する担い手側の祭り自体への再帰的な意識の高まりの中で、いかに祭礼とその担い手集団が再編成されるのか研究を行っている。 平成27年度は、滋賀県竜王町の苗村神社三十三年式年大祭・長浜市の長浜曳山祭についての研究を行った。平成27年に行われた式年大祭の追加調査を行い、33年に1度しか行われない祭礼において、人口の減少やそれにともなう他出者・女子の参加、また映像記録などのメディアの活用や現在の住民のリアリティ、また集合的な記憶を通じていかに芸能が再編成されたかについて明らかにした。成果は滋賀県立大学人間文化学部,2015,『苗村神社三十三年式年大祭調査報告書』(竜王町教育委員会)の分担執筆、および武田俊輔(編著)・滋賀県立大学式年大祭調査団,2016,『世代をつなぐ竜王の祭り 苗村神社三十三年式年大祭』(サンライズ出版)として刊行した。 長浜曳山祭については、伝統的な町内の外部からの参加にともなう祭礼の変化、ユネスコ無形文化遺産指定をめぐる動き、祭礼組織内のコンフリクトや資金を調達する社会的ネットワーク、戦後の祭礼組織の再編成について調査を行った。成果の一部は武田俊輔,2016,「都市祭礼の継承戦略に関する歴史社会学的研究 長浜曳山祭における社会的文脈の活用と意味づけの再編成」野上元・小林多寿子(編著)『歴史と向き合う社会学 資料・表象・経験』(ミネルヴァ書房)として刊行、また日本生活学会・日本都市社会学会・日本社会学会で報告し、28年度に3報の査読論文が刊行される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
27年度は苗村神社三十三年式年大祭と長浜曳山祭に関して調査を行ったが、前者については、祭礼を中心的に担う九村と呼ばれる9つの集落(島村・神部・川守・岩井・綾戸・田中・奥村・川上村・賀輿丁村)のうち、島村・綾戸・田中・賀輿丁村について、映像記録などのメディアの活用や現在の住民のリアリティ、また集合的な記憶を通じていかに芸能が再編成されたかについての調査を具体的に行うことができ、予定していた報告書と編著の刊行を行うことができた。 長浜曳山祭に関しては、当初想定していたよりもはるかに多くの成果を得ることができた。第1に、都市祭礼研究におけるもめ事やコンフリクトに関する研究において、新たな意義ある分析を行うことができたこと、第2に祭礼全体や個々の祭礼組織による資金調達の仕組み、特に個々の祭礼組織における協賛金という形での資金調達とそれを可能にする社会的ネットワークに関する研究を進展させることができた点、第3にかつて農村部から雇われていたシャギリの役割が、祭礼組織自体によって担われていくプロセスにおける祭礼組織の再編の論理についての分析を進展させたことが挙げられる。これらは3本の学会発表を経て、『生活学論叢』(日本生活学会)・『フォーラム現代社会学』(関西社会学会)・『年報社会学論集』(関東社会学会)に査読論文として刊行されることが決まっており、初年度の研究成果としては当初の予定を越えて研究が進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に調査地の一つ、山口県上関町祝島において4年に1度の祭である「祝島神舞」が執行される。祝島を舞台とす るドキュメンタリー映画の影響もあり、祭が行われた 5 日間は島外からの観光客も数多く訪れている。このように島民だけでなく他出者、また新規参加者や観光客が数多く見られる点で、それら三者の関係性やそれぞれにとっての祭の意味について分析するに適しているため、準備段階からの参与観察とインタビュー調査を行う。直近の動きとして島への移住者を増やす取り組みを行う団体の活動も目立つようになっており、そうした団体に対してもヒアリングを行う予定である。 長浜曳山祭については、戦前・戦後における伝統的消費都市としての長浜の変容と結びつけて長浜曳山祭の変容について具体的に分析を行うと共に、各祭礼組織間の対抗関係の分析、また秋のユネスコ無形文化遺産登録決定に向けた準備が進行する中での、祭礼の変化や観光化への対応についての調査を行う。
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Causes of Carryover |
文具などの一部の物品で、当初予定していたよりも安い価格で購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文具の購入に使用する。
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