2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03863
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
堀内 一史 麗澤大学, 経済学部, 教授 (60306404)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 福音派 / 環境保護運動 / 福音派左派 / 宗教右派 / 原理主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年11月12日に開催された地球システム・倫理学会第12回学術大会において「米国キリスト教福音派による環境保護運動:その現状と課題」と題して個人発表を行ったが、それに基づき執筆した論文は、翌平成27年に、同じタイトルで『地球システム・倫理学会会報』No.12、2017(112-117頁)に掲載された。 最終年度の平成28年度は、過去2年間で収集しきれなかったデータについて、10月末から11月初旬にかけて米国を訪問した。特に、平成25年度に訪問した、環境保護より経済発展を重視するCornwall Alliance for the Stewardship of Creation(CASC)の指導者である宗教右派のキャルビン・ベイスナー博士から、CASCと宗教右派組織および共和党との連携や関わりに関する情報を入手できていなかったことから、11月に再度訪問したものの、訪問の打診の段階で宗教右派および共和党関連団体との組織的関係に関する事情聴取は、かなり立腹したような書き方で拒否されたため、止む無く、同関係については情報収集を避け、神学的背景、特に原理主義的思想に関する情報収集を行った。 一方、福音派左派であり、環境保護運動の初期的指導者であり、ベイスナー博士とは対局に位置するロン・サイダー博士との面会も実現し、Evangelical Environment Network(EEN)と同じ陣営に位置づくNational Religious Partnership for the Environmentの創設者の一人でもある。 これらの調査によって、環境に関する福音派の右派陣営と左派陣営の思想的背景はおおよそ明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
経済発展を重視し環境保護に反対するキャルビン・ベイスナー博士が代表するCASCの組織的全容を把握することが本研究のひとつの重要課題であった。文献調査では、CASCは共和党の諜報員であるクリス・ロジャースが代表を務めるジェイムズ・パートナーシップ(JP)の下位組織であり、もう一方の下位組織の団体がフォーカス・オン・ザ・ファミリーなどの宗教右派団体の広報を担当する広告代理店である。また、JPはレーガン保守政権当時創建されたシンクタンクのヘリテージ財団とも関係があるとされている。しかしながら、こうした関係を明らかにするためにCASCのベイスナー博士に面会しインタビューを行うために、メールで事前に趣旨を説明したところ、宗教右派とは無関係であり、共和党とも全く関係がない旨の、怒りに駆られて語気をつよめた返事があった。これを受け、関係修復をするための返事を書き、面談に漕ぎつけ、思想面での情報は入手できたものの、組織的な背景についての情報収集はとん挫した。 また、当初は環境保護の草の根的運動に注目する予定であったが、さほど、ネットワークは濃密かつ継続的ではなく、緩やかで非継続的であることが判明し、この点も、方針転換が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の現在までの進捗状況に鑑み、限られた時間の中で、本研究から組織論的分析、草の根運動としての分析は避け、福音派左派の成立の経緯および環境保護運動の現実を、文献調査および聞き取り調査に基づき、思想的・神学的背景を手掛かりに、宗教右派との比較の視点に立って、出来得る限り実証的に論じることにしたい。 次年度は延長いただいた最後の年度として、昨年度の聴き取り調査では網羅しきれなかった、本研究の中核的部分をなす人物、特に、福音派左派の環境保護運動家、Blessed Earthの所長のMatthew Sleethおよびキリスト教神学者David Gusheeから聞き取り調査を行い、論文を書き上げ、学術誌に投稿する予定である。なお、この2名に関しては、聴き取り調査を実施計画したものの、先方の都合により、実施に至っていなかった。
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Causes of Carryover |
研究協力者の都合により実施できなかった聞き取り調査1回分を、次年度に研究延長の認可を得て実施予定である。この調査は本研究の中核的意義を持つため止む無く延期せざるを得なかった。
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