2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後アメリカ移住日本人女性のエスニック・ネットワーク形成に関する研究
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15K03879
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
中西 祐子 武蔵大学, 社会学部, 教授 (90282904)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エスニック資本 / 日系女性移民 / アメリカ / 社会関係資本 / エスニシティ / ジェンダー / 国際移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は主として4つの研究活動を行った。 (1)サンフランシスコ・ベイエリアでのフィールドワークとインタビュー:2015年8月下旬に現地でフィールドワークを行い、新移民(戦後アメリカに移住した日本人)コミュニティの中で、移住者同士を結び付ける「ハブ」的機能を担っている人物2名へのインタビューを行った。2名に対しては以下の内容を中心に尋ねた:現地に移住している人たちにはどのような人がいるか/どのような日系ネットワークが構築されているか/サンフランシスコの日系コミュニティの近年の変化/日系社会に関する各種統計資料、等。 (2)アメリカ社会学会での研究成果の発表: 2015年8月中旬シカゴ(アメリカ合衆国イリノイ州)で開催されたアメリカ社会学会において、タイトル“Ethnic Ties Stronger than Family Ties: Ethnic Social Capital Utilized by Japanese Immigrant Women.”を口頭発表した。従来言及されてきた「エスニックな社会関係資本」とは、移民の経済的成功について焦点を当てるものであることが多かったが、本研究が着目している移住日本人女性たちの「エスニック社会関係資本」は福祉的側面をもっている。とりわけ血縁家族・親族を伴わずに渡米する者の多い日本人女性たちにとっては、その互助的関係性は、現地において、疑似家族的な役割を果たしていることを指摘した。 (3)日本国内において、社会関係資本や国際移動に関するシンポジウムや研究会に参加し、理論・調査方法・調査結果について情報収集を行った。 (4)上記(2)の発表を土台に、論文「アメリカ移住日本人女性たちが活用するエスニックな互助的社会関係資本―疑似的家族関係として機能する社会的ネットワーク―」(『ソシオロジスト』18号所収)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた作業についてはおおむね順調に行うことができた。2016年度に計画している調査に関する有益な情報も2015年度に行ったインタビューの際に得ることができた。 また、2016年夏開催の国際社会学会において本研究成果を報告することを目標に2015年秋に発表要旨のエントリーを行っていたが、レフェリーの審査を通過し、2016年に学会報告をすることが決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は次の研究活動を行う予定である。 (1)戦後アメリカに移住した日本人を対象にインターネットを利用した質問紙調査を行う。なお、インターネット調査を活用する理由は、調査対象者が非常に広範囲に居住しているため、紙媒体の質問紙の留め置き調査や郵送調査を行うよりも、インターネットを利用したほうが合理的であると判断したためである。 (2)新一世(戦後のアメリカへの移住者)が作り上げている大小さまざまなコミュニティについて調査する。コミュニティの核となっている人物へのインタビューを実施するとともに、現地において人々に利用されている日系メディアについても調べる。 (3)2016年7月に開催される国際社会学会(於:ウィーン・オーストリア)において、これまでの研究成果について発表する。 (4)エスニックコミュニティ、国際移動、社会関係資本に関する先行研究および、最新の動向について引き続き情報を収集する。
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Causes of Carryover |
データ分析や資料保存用に使っているパソコンを新調する予定であったが、これまで使用のパソコンが継続して使用できたため、2015年度は買い替えを控えた。 当初はシカゴでのアメリカ社会学会での口頭発表前後に、サンフランシスコにおいて1週間ほどフィールドワークとインタビュー調査を実施する予定でいたが、国内業務の都合上、出張可能な期間が限られてしまったことに加え、学会発表準備に時間を要したため、サンフランシスコでの調査実施期間が当初予定より短くなってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しいパソコンについては2016年度に機種を選定し、購入を予定している。 2015年に行う予定であった現地でのフィールドワークについては2016年の夏に渡米して実施する予定である。
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Research Products
(2 results)