2015 Fiscal Year Research-status Report
1950年代の米国による映画広報政策と日本の防衛広報の結節点についての実証的研究
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15K03882
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷川 建司 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10361289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 遙子 早稲田大学, 政治経済学術院, 研究員 (60439552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | USIS / USIA / 文化外交 / 世論工作 / 映画 / 自衛隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず第一段階の調査として、国際日本文化研究センターにて1950-60年代の『キネマ旬報』を研究代表者・研究分担者の両名にて全て通読し、自衛隊協力の可能性のある戦争映画、航空映画等の記事をコピーし、リスト化した。これにより、戦争映画約180本、航空映画約50本を抽出、新たに5本の協力映画を発見することができた。 次に夏季休業期間を利用して、研究代表者・研究分担者の両名にて米国メリーランド州カレッジパークにある米国立公文書館での調査を2015年10月10日から15日まで行なった。この結果、USIS(米広報文化交流局)による反共を目的とした世論工作を詳述した報告書の一次資料を確認し、コピーすることができた。この報告書は、フロリダ・アトランティック大学のケネス・オズグッドが『TOTAL COLD WAR』(University Press of Kansas, 2006)で言及しているものである。この報告書を確認したところ、確かに高倉健主演の『ジェット機出動 第101航空基地』(小林恒夫監督、東映、1957)を含む少なくとも5本の映画にアメリカが関与した事実は判明した。マーク・メイの報告書自体は、これまでにも愛媛大学の土屋由香が、論文「アメリカ情報諮問委員会と心理学者マーク・A・メイ」(『Intelligence』第13号、20世紀メディア研究所、2013)の中でも詳しく紹介しており、また2007年10月21日付の中国新聞において、米政府情報顧問委員長(当時)を務めたマーク・メイが1959年に日本に5週間滞在してまとめたこの報告書において、USISが日本映画やラジオ番組の制作、出版物刊行をひそかに援助し、米国が望む方向への世論誘導を図った実態が細かく記述されていると報道されたことがある。この原資料の全文を入手したことにより、次のステップへの足掛かりを掴んだと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】にて述べた、マーク・メイ報告書によって間接的ながらも米国がUSISの活動の一環として日本の映画会社に協力して、日本の自衛力の必要性を世論に訴える目的の映画に対してなにがしかの便宜を図ったこと自体は確証が得られたものの、タイトルが判明している『ジェット機出動 第101航空基地』以外ほかの4本の映画のタイトルは記述されておらず、さらに関係資料をあたって作品を特定する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度も引き続き夏季休業期間を利用して米国メリーランド州カレッジパークにある米国立公文書館での調査を行ない、残りの4作品の特定を試みる予定である。また、同時に昨年度のキネマ旬報の調査で抽出した戦争映画約180本、航空映画約50本、とくに新たに5本の自衛隊等協力映画と思われる作品のタイトルが判明しているので、それらが、マーク・メイ報告書で述べられている残りの4本と合致するものであるかどうかを、それらの作品の鑑賞機会を何らかの形で設けて、また個々の作品の製作関連資料を探して確かめていきたい。
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Research Products
(2 results)