2016 Fiscal Year Research-status Report
1950年代の米国による映画広報政策と日本の防衛広報の結節点についての実証的研究
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15K03882
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷川 建司 早稲田大学, 政治経済学術院, 客員教授 (10361289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須藤 遙子 筑紫女学園大学, 現代社会学部, 准教授 (60439552)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パブリック・ディプロマシー / 文化広報 / 映画政策 / USIA / 自衛隊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1950年代に製作・公開された何本かの日本映画が、アメリカ(米軍)と日本(警察予備隊/保安隊/自衛隊)による二重のプロパガンダ映画であったと仮定し、アメリカ国立公文書館所蔵の米広報文化交流局(USIA)文書の確認・分析を通し、それらの作品の製作背景や作品に込められたメッセージ内容を考察していく計画で、アメリカ公文書館にある一次資料を用いてのドキュメント・スタディとして、占領期のGHQによる対日映画政策を研究してきた谷川建司(研究代表者)と、自衛隊の映画協力が法的に整備された1960年8月通達の次発官公第160号「部外製作映画に対する防衛庁(現在は防衛省)の協力実施の基準について」以降の映画協力の資料が確認できた35本の自衛隊協力映画を分析した須藤遙子(研究分担者)との共同研究によって、戦後日本の軍事組織がアメリカの関与の下で行ってきた映画広報政策(パブリック・ディプロマシー)を詳細に解明することを目的としている。 既に過去二年間の米国メリーランド州にある国立公文書館、およびそのニューヨーク分室等での集中的な調査によって必要な資料(具体的には、イェール大学のマーク・A・メイ教授によるUSIAの日本での活動についての調査報告書)の入手はほぼ計画通りに達成しており、また、東京の国立近代美術館フィルムセンター図書室、松竹大谷図書館、公益財団法人川喜多記念映画文化財団、京都の国際日本文化研究センター等にて史料調査・資料調査を進めて、米国で発見した資料と照らし合わせるべき日本側の資料についても一通りの調査を終えている。具体的な研究成果としては、資料の翻訳・紹介部分と、考察・論考部分を併せ持った書籍の出版という形で共著を出版する計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は三年計画の第二年度であり、研究成果の質に直結することになる米国での資料調査を柱として、2015年度に引き続き夏季休業期間を利用して米国メリーランド州にある国立公文書館での集中調査を研究代表者(谷川)と研究分担者(須藤)の二名にて行った。2015年度の調査でもある程度の資料は発見していたものの、本研究計画の中核をなすはずの資料としてのイェール大学のマーク・A・メイ教授によるUSIAの日本での活動についての調査報告書を発見することが出来た。また関連するほかの資料も入手することが出来、あとはそれらを元に日本側の資料との照らし合わせを行って考察し、論考にまとめていくための環境を整え終えた、と位置付けることが出来る。 帰国後は研究代表者と研究分担者それぞれが入手済み資料の読み込みを行い、共著としての論考をまとめていく前段階の作業として、マーク・A・メイ教授の報告書自体を分担してまるごと翻訳する必要がある、という結論に達した。そして出版社とも相談した結果、マーク・A・メイ教授の報告の全訳を核に、関連する別の資料の一部も翻訳して併せて紹介し、その翻訳書を研究代表者と研究分担者の共訳書としてまとめ、そこに資料の解説部分として論考を加えていく、という形で研究成果を公表するのが最も効果的である、という合意が形成された。現在は、この合意に基づいて、出版社とも随時連絡を取りながら、研究代表者と研究分担者それぞれが自分の分担部分の翻訳作業を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(2017年度)には、それぞれに翻訳部分を終えた段階で打ち合わせを行い、解説部分の論考の執筆について意見交換の上、執筆作業に入る予定である。本の刊行スケジュールについては出版社側の都合などの要素も加味しなければならないが、目標としては2017年度中の刊行を目指したい。
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Causes of Carryover |
端数の調整がどうしてもぴったりの金額にならず1円のみ残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年分の金額と併せて適切に使用したい。
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Research Products
(1 results)