2015 Fiscal Year Research-status Report
保育・教育費負担の「脱家族化」は人口減対策になるか?日本の自治体と瑞仏の調査から
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15K03889
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
大岡 頼光 中京大学, 現代社会学部, 教授 (80329656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脱家族化 / 自治体の少子化対策の限界 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、保育・教育費の負担を家族から社会へ移す「脱家族化」は人口減対策になるかという問題を、日本の地方自治体調査から考えることである。日本には人口減対策のため保育・教育費を無料とし「脱家族化」する自治体がある。それは人口減対策のため有効なのか。それを自治体の予算の分析で明らかにしようとした。 そのため、まず最近、年少人口が増加した自治体を取り出した。具体的には、5年ごとに行われる国勢調査で年少人口(15歳未満人口)が2005年から2010年にかけて増加した自治体で、かつ、その間に合併しなかった自治体200を対象にして分析を行った。これら年少人口が増加した市町村の2007(平成19)年度の予算を、総務省の市町村別決算状況調から調べた。その予算の編成時には、2005(平成17)年の国勢調査の情報を参照できただろうからである。 地方自治体が保育・教育費を無料とし「脱家族化」すれば、当然、児童福祉費と教育費は増えるはずである。市町村別の目的別歳出内訳から、児童福祉費と教育費を取り出した。教育費のうち、社会教育費と体育施設費等は除いた。社会教育費には全世代向けの施設があり年少人口向けの予算だけを取り出せず、体育施設費等は年度による金額の変動が激しいからである。自治体住民1人あたり児童福祉教育費(2007年度)と、年少人口増加率(2005年~2010年)の相関を見ると、R2値は0.10。相関がほとんど見られない。 経済学の小峰隆夫教授の指摘(①地方レベルの少子化対策は効率が悪い。子育て世帯を引きつける政策を取っても、近隣地域との奪い合いに終わる可能性が高い。②少子化対策は基本的には国の責務だ。少子化対策を充実するには、高齢者向けの社会保障を合理化して、少子化対策に振り向けることが必要だ。それができるのは国しかない。)を、更なる分析により裏付けうる可能性が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では各自治体への現地調査を予定していたが、その前に全国的な状況を把握する必要があった。そのため、上記のような国勢調査や各自治体の予算分析にもとづき、児童福祉費と教育費を充実している自治体ほど、年少人口の増加がより多く見られるかを分析した。しかし、そのような傾向は見られないことがわかった。 また、個別の自治体で成功事例はあることもわかった。そこでは、①住民自らが参加し労働することによる徹底した経費の削減、②首長、自治体議員、職員の給与カット、③予算編成の徹底した透明化などによって財源を捻出し、児童福祉費・教育費の予算を充実した。これらが可能になったのは、「自治体の発展には、人を育てるのが一番確実だ」という考えが、自治体住民の間に浸透していたからではないかと考えられる。更なる調査を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究の進捗により、上記の自治体の成功事例を、国レベルにまで広げることがどうしても必要であることがわかった。そのためには、どのような政策の根本的思想と戦略が日本の国レベルで必要かを今後はまず研究していく。 今後予定しているスウェーデン、フランスの現地調査でも、国レベルでどのような思想と戦略で、児童福祉費・教育費の財源を捻出していったのかに、まず焦点を当てて研究を進めていく。その上で、各自治体での実践や工夫も、国レベルの問題を考えるために役立つような事例に焦点を当てて、研究していくことにしたい。
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Causes of Carryover |
日本の各自治体の現地調査を、次年度以降に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当面は、日本の国レベルの政策思想とその実行戦略を練るために、「脱家族化」や少子化対策に成功してきたスウェーデンやフランスでの国レベルの政策思想と実行戦略の研究に注力する。2国での資料収集、関係者へのインタビューなど現地調査を優先して行う。その実施のために引き続きフランス語講座で会話力、文章力を高める。 国レベルでの研究を優先して行う中で、必要に応じて、日本の各自治体の現地調査を行っていくこととする。
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Research Products
(1 results)