2017 Fiscal Year Research-status Report
大学・研究機関の国際化と研究者の流動性:個人の移動経験とその評価を中心に
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15K03899
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
酒井 千絵 関西大学, 社会学部, 准教授 (30510680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グローバル化 / 高等教育 / 多文化社会 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は大学における国際化・グローバル化に向けた取り組みを観察し、資料を収集した。特に、英語を用いる授業の実施や研究者の国際的な研究体制を支援する具体的な取り組みについて、聞き取りを行うとともに、実際にその取り組みに参加し、参与観察を行った。また、主に中国からの大学及び大学院への留学生に対して聞き取り調査を行い、日本への留学を決断した経緯や留学生活に対する評価、卒業後のキャリア展望について情報を収集した。 調査を通じて、国際化・グローバル化に向けた政府の教育行政の取り組みがもつ問題点が明確化されてきている。たとえば、英語を共通語とするグローバルな研究体制の中で日本の高等教育が持つプレゼンスや地位を上げていくことをめざす一方で、日本人学生を主体とする大学学部教育では、その取り組みに呼応していく学生が一部にとどまっていること、英語圏からの留学生も一定数含まれる短期留学・交換留学と、東アジアの非英語圏からの留学生とが混在していること、などの矛盾を含むものであることが分った。2017年度はまた、オーストラリア・パースで行われた「アジアにおける女性」の学会に参加し、日本から中国へ移住する女性の経験に関する研究発表を行い、合わせて、アジア研究者の国際交流のあり方について、研究者から話を聞いた。大学や研究機関の国際化・グローバル化においては、アメリカやヨーロッパが目指すべきモデルとしてイメージされることが多いが、日本との人的交流の規模を考えると、中国をはじめとするアジア諸国の役割は大きい。日本に留学して学ぶ中国からの学生に加え、中国で学ぶ日本人や研究・教育活動に当たる日本人研究者への聞き取りは、英語を軸に成り立つ研究ネットワークと併存する、アジア圏での研究交流のあり方を示唆するものとして分析が可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は、留学生への聞き取りを中心に調査を進め、英語での学会発表や研究会出席の機会はある程度持つことが出来たものの、資料やデータの収集がまだ十分とはいえず、論文として完成することが出来なかった。大学のグローバル化に関しても、まだデータに偏りがあり、調査の時間をあまりとれなかったこともあって、研究期間を1年間延ばし、調査を継続するとともに、論文として完成させる時間をとることが適当だと判断せざるを得なかった。ただし、1年間期間を延長することで、調査の対象を広げ、これまでに得られた調査結果を十分に生かすことが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の調査研究は、以下の3点から行う。 1)日本国内で規模や性質の異なる大学を複数選び、グローバル化の取り組みの現状と問題点を調査し、比較する。 2)主にアジア内の非英語圏からの留学生や非英語圏で研究・教育に当たる日本人研究者への聞き取りを行い、英語を軸とした研究の国際交流と比較し、その特徴を検討する。 3)研究分野や学問領域によって、外国語の使用や外国の研究機関との交流や共同研究に相違があるのかを中心に、研究者への聞き取りを行い、分析する。
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Causes of Carryover |
(理由)2017年度はまとまった調査を行う期間をとることができず、調査計画の方向性を再検討したこともあって、十分なデータを収集することが出来なかったため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)2018年度は国際社会学会での報告(7月、カナダ)、海外調査(9月、中国)等を予定している。また英文論文に必要となる英語校正、調査の書き起こし等の費目への支出を予定している。
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Research Products
(2 results)