2016 Fiscal Year Research-status Report
地域における就業困難者に対する「就労支援」の意義と役割に関する調査研究
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15K03920
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 教授 (80159441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 就労支援 / 就業困難層 / 地域 / コミュニケーション / 障害 / NPO |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は就労継続支援B型と就労移行支援を行っているX事業所と自治体として就労支援に取り組んでいるY市での聞き取りを中心として研究を進めた。 X事業所は就労が困難な若者を主な対象として就労を支援する多様な取り組みを行っているが、その中心は清掃業務である。一つの現場で利用者6~7人とスタッフ1~2人が一緒に仕事を進めている。現場のスタッフによれば、それぞれの障害や能力に応じて仕事を分担しているが、比較的早く仕事のやり方は覚えられる。しかし、体力・体調の問題もあって欠勤・早退や休みを挟みながら仕事をするケースもある。また作業速度の違いなどもあり、そうした問題にはグループで対応している。 本事業所の特徴は、多様な取組みを行っていること、外部委託ではなく事業所が仕事をつくり、スタッフと一緒にグループを単位として作業していることである。これは、アセスメントやコミュニケーション、作業の協力などの点でメリットが大きい。しかし、コミュニケーションの問題や仕事への意欲・能力などが多様ななかで、1人1人の多様な状況に対応するには、さらに仕事の多様性が求められる。 Y市では、生活保護受給者を対象として、彼らの自尊感情を回復させるため、地域の企業やNPOと協力して就労体験を積むなど、段階的な支援プログラムを作成して自立に向けた就労の支援に取り組んでいる。 プログラムの参加者は拡大し、生保受給者の3割に達する一方、就労現場での支援者を確保することの困難もあり、受け入れ事業所は必ずしも広がっていない。自立支援プログラムで非正規雇用を含めて一般就職した者は一定数いるが、就労しても生保の廃止に至らない人が少なくない。同市では、自治体が直接プログラムをつくり、支援に取り組んでいるところに特徴があるが、就労の場や作業自体は受け入れ企業に依存しており、参加者の状況に応じたきめ細かな支援が困難といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今日、就労支援に取り組むNPO、自治体などは数多く、それぞれが特徴をもった取り組みを進めている。それらの取り組みの多様性を認識するとともに、そこにはいくつかのパターンが認められるため、就労支援の取り組みについては、できるだけ多くの聞き取り調査を実施したいと考えている。また、本研究では、就労支援団体の聞き取りだけではなく、支援スタッフへの個別の聞き取りも行っており、できるだけ多くのスタッフに聞き取りを行うには時間を要する。しかし、調査の日程を確保することが容易ではないため、多くの支援団体やそのスタッフを調査するという点では、研究がやや遅れているといえる。しかし、聞き取り調査自体は着実に進めており、そのなかで、就労支援の詳細な方法など興味深い点も把握できている。 今後は、聞き取り調査の充実をはかるために調査対象を広げる一方で、聞き取りの成果の整理・分析も進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで就労支援を行っているNPOや地方自治体などへの聞き取り調査を進めてきた。そのなかで、就労支援の理念、対象などが多様であることはもとより、具体的な取り組みについても、さまざまなやり方、方法があることが明らかになった。本調査研究では、組織への聞き取りと同時に、支援スタッフへの個別な聞き取りを行うことを特徴としており、スタッフへの聞き取りを通じて就労支援の具体的な進め方や問題点なども把握できてきた。 今後は、さらに地方圏で就労支援を進めているNPOのスタッフにたいする聞き取りを中心にして、就労支援の具体的な進め方や支援方法、作業の組み方、また、スタッフが実際にどのような業務を行っているのかなど、具体的な支援の内容・方法について詳細な点の把握に努める。また、支援を通じた利用者の変化や問題点などについても聞き取りを進める。これら聞き取り調査にもとづいて、就労支援の取り組みについて、いくつかのパターンを析出するとともに、それらの特徴点を整理したうえで、就労支援の意義や課題についてまとめる。
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Causes of Carryover |
図書・資料の購入がやや遅れたこと、資料の整理も十分進まなかったため、物品費と謝金の支出額が当初予定を下回った。旅費は、調査や研究会発表を行うために支出したが、年度末の日程調整がつかず、当初予定したほどには調査先が広がらなかったため、予定額を少し下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、さらに聞き取り調査を進めるために経費をまず旅費に使用する予定である。また、研究のとりまとめを進めるため、謝金を聞き取り調査などの成果を整理することや関係者から専門知識の提供を求めることにあてる。さらに、本研究に関わる図書等の購入は、早期に行う予定である。
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