2018 Fiscal Year Research-status Report
思春期の情緒的自律性の発達と親子の相互信頼感,相互調整的態度変容に関する研究
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15K04056
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平石 賢二 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (80228767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 思春期 / 親子関係 / 親子間葛藤 / 相互信頼感 / 情緒的自律性 / 心理的適応 / 相互調整的態度変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は主に以下の点に関して研究活動を行った。 (1)情緒的自律性と心理的適応,親に対する言動抑制との関連:本研究課題のメインテーマである青年の情緒的自律性が親子関係と心理的適応に及ぼす影響を検討するために,国立大学,私立大学5校の学生498名を対象にした質問紙調査を実施した。親子関係に関しては,親の養育態度と親に対する言動抑制(親の脆弱性不安,関係性への不信,抑制行動,応答性への懸念の4側面)を取りあげた。その結果,青年の情緒的自律性は心理的適応に直接的な影響を示さず,親の養育態度と共に言動抑制を媒介して心理的適応に影響を及ぼしている可能性が示唆された。 (2)思春期の母子関係における相互信頼感と親の心理的統制,親子間葛藤の関連:本研究課題における2つめの中心的な概念として位置づけている思春期の親子関係における相互信頼感の機能と関連要因を明らかにするために,過去に収集した母子ペアの3時点での縦断調査データの二次分析を行った。関連要因としては,親の心理的統制と親子間葛藤を取りあげた。母子それぞれのデータ9変数(3変数×3時点)に対して交差遅延効果モデルと同時効果モデルの分析を行った。その結果,青年の報告では同時効果モデルで一部,相互信頼感が親子間葛藤に負の影響を及ぼしていた。母親の報告では想定していた相互信頼感が心理的統制や親子間葛藤に影響を及ぼすという結果は得られず,親子間葛藤が他の2変数に影響を及ぼしていた。これらの成果は,2018年9月に開催されたヨーロッパ青年期学会第16回大会(ベルギー・ヘント大学)で発表した。 (3)親子の心理的自立に関する理論的検討:青年-両親関係における双方にとっての心理的自立と相互調整的態度変容の課題に関する概念整理と仮説的なモデルの構築を行い,その結果を「教育と医学第67巻3月号」に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
諸々の事情により本研究課題に費やすことができるエフォート率が大幅に低下しており,新たな調査計画の検討が十分にできず調査が実施できなかったために遅れが生じた。また,既に所有しているデータの二次分析の結果,申請当初に想定していた仮説モデルの見直しを余儀なくされていることも遅延理由の一因になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの遅れを取り戻すために,研究期間の延長(2019年度)を申請し,承認された。また,本研究課題に取り組むためのエフォート率の上昇,維持と,研究協力者の拡大,研究組織の強化を図りたい。
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Causes of Carryover |
研究遂行に遅れが生じていたため,1年間の研究期間延長を申請し,承認された。2019年度には,予定していた調査を実施するため,そのための調査費用およびデータ整理と分析のための人件費,研究成果発表のための旅費を支出する予定である。
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