2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04101
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
神長 伸幸 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (90435652)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文章理解 / 眼球運動 / 文字表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語の文章を読む際の眼球運動に注目し、読書中の文字からの意味・音韻情報の抽出過程および円滑な眼球運動統制について明らかにすることである。日本語は、漢字仮名交じり、単語・文節間の空白がないこと、縦書きと横書きの併存などの特徴を有している。よってその表記は、世界的に見ても特異的なものの1つであると言える。読書中の眼球運動に注目した従来研究のほとんどがアルファベット表記の文章を刺激材料としていることから、日本語を材料とする本研究で得られた知見は、読書中の情報処理のうち、各言語の表記特徴に影響を受ける過程と特定の表記に依存しない普遍的な過程を明らかにするうえで重要な証拠となる。本研究は、文章理解過程の中でも単語の音韻、意味抽出過程および次の注視点停留位置を決定する際の周辺視野処理に注目する。この目的を達成するためには、1文字の単位で注視位置を特定できる精度の高い測定に加えて、注視位置に合わせた刺激文・単語の提示を実現することが重要である。研究全体の開始年度にあたる本年度は、この高い測定精度の確立と注視位置に合わせた刺激文、単語の提示の技術を開発することにあたった。結果として両者の目的は十分に達成し、研究1として縦書きと横書きの周辺視野処理を検討するための実験を開始した。大学生12名に参加してもらい、データ取得までを終わらせた。また、単語の意味抽出に関わる要因として、単語の出現頻度に注目し、これを検討する語彙判断課題実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、基本的な測定設備、実験プログラムの構築を実施した。本研究では、実験参加者がPC画面に提示された文章を読解することを課すが、その際、参加者の中視点の移動に応じて、刺激文章の一部または全体が変化するような実験状況を構築する必要があった。本研究で用いるSR-Resarch社製の眼球運動装置は、これに対応できる十分な性能を有するが、刺激提示用のディスプレイは従来製品でこの条件に十分対応できていなかった。そのため、複数の製品を試験しながら、実験状況の確立を目指した。また、年度後半では、研究1として計画していた、縦書きと横書きの読みやすさの比較実験を実施した。読みやすさの指標として読み時間、注視点の停留時間、サッカード距離を設定した。さらに、中視点を中心とする文字刺激の提示範囲を動的に変化させることによって、読みやすさの指標が周辺視野の広さとどのように影響し合うのか、また、それが縦書きの場合と横書きの場合で異なるのかを検討した。大学生12名が実験に参加し、現在は、取得したデータの予備解析を実施中である。 さらに、単語の意味抽出過程に影響する要因の一つとして、単語の出現頻度に着目した。本研究では、従来研究で指摘された単純な出現頻度だけでなく、ある話題の中で特によく用いられるかどうかを頻度の指標として加え、単純な頻度と話題特有の出現頻度の違いを検討した。実験では、参加者に語彙判断を課し、反応時間を指標とした。実験には12名の大学生が参加した。現在、データを解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、解析を進め、縦書きと横書きの違いが読書中の周辺視野情報処理に影響するのかを検証していく予定である。また、単語の出現頻度が意味抽出過程に及ぼす影響を検討した語彙判断実験の結果は、2016年7月に開催される国際心理学会において、その成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果を国際学会にて発表したが、開催地が日本であったため発表に関わる旅費が大幅に縮小した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に使用するPCを最適なものにするため、スペックの高いものを購入予定である。また、収集したデータの下処理を行う研究補助アルバイトを雇用予定である。さらに、研究成果を国際学会にて発表し、論文投稿を進める予定である。
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