2015 Fiscal Year Research-status Report
高次脳機能障害の評価とリハビリテーションにおける新技法の開発
Project/Area Number |
15K04130
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山下 光 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10304073)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 神経心理学 / 触覚認知 / くすぐり / 半側空間無視 / テスト効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)高次脳機能障害の症状の一つである触覚情報処理障害(触覚失認,触覚失語,立体覚障害等)の評価の基礎データとなる触覚による物品呼称の基準データを,大学生を対象に収集,分析した。その結果,少なくとも健康な大学生は日常生活で使用する10カテゴリー100種類の物品を,右手,左手にかかわらず迅速かつ正確に呼称可能であることとが分かった。物品毎の詳細な基準データを付した英文の報告を作成し,International Journal of Psychological Studies誌に掲載した。 (2)くすぐったさに関する基礎的研究では,自己くすぐり刺激がくすぐったさを引き起こすかどうかを大学生を対象として検討した。参加者は自分の手の5本の指で,足の裏をくすぐった。その結果,他者から観察可能なほど強いものではないが,くすぐったさを自覚した参加者が多かった。また,くすぐったさは,手と足が同側であった場合より,交差していた場合の方が強かった。この結果について英文の報告を作成し,インターネット上のオープンアクセス誌であるComprehensive Psychologyで公開した。 (3)脳損傷による視空間認知の障害を調べる複数の検査課題を大学生や中高年の社会人に実施し,健常者の基準データを収集している。その一部について第39回日本神経心理学会学術集会でポスター発表した。 (4)最近,記憶研究において学習の定着にテストが有効であるというtesting effectsが注目を集めているが,実際には実際には最長でも2週間程度の遅延再生で検討されることが多い。そこで,臨床用の非言語材料を使用した記憶検査であるRey複雑図形検査を材料として1年間の超長期遅延でテスト効果を検討した。その結果,一般的な言語材料ではなく非言語材料においてもテスト効果が認められること,またそれが1年間にわたって持続することが分かった。この結果を,第39回日本高次脳機能障害学会学術集会で口頭発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展しているが,一部の研究で進捗の遅れが生じている。特に詐病の検出に関する研究においては,研究協力施設から主たる協力者が転出したこともあり,データの収集が遅れている。また,研究代表者の多忙や,一時的な健康問題によってデータの収集が終わっても論文が完成していない研究がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
詐病の研究に関しては,新たな研究協力施設を探している。主たる協力者の転入先の施設とも現在交渉中である。現在,調査・実験が終了している研究については,学会発表,論文作成に重点を置いて仕事を進める。
|
Causes of Carryover |
論文の作成(専門業者による校閲を含む),掲載,オープンアクセス化にともなう費用が予想以上に安かった。その原因のひとつは,論文査読のプロセスで編集者の事務的作業にミスがあり,査読のプロセスが非常に長くなってしまったため,料金のディスカウントが行われたためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は外部の施設での実験が増える予定だが,それに使用するためのタッチスクリーンを備えたノートPCを購入する。また,よりレベルの高い雑誌への論文掲載とオープンアクセス化を目指す。
|