2015 Fiscal Year Research-status Report
体育授業における教師の「身体-感性-言語」の関係に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
15K04203
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
厚東 芳樹 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80515479)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Sensitivity / Awareness / 感性 / 出来事の予兆への気づき / 言語的相互作用 / 優れた教師 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,体育科における学習成果を高めた教師は「運動の知識」と「子どものつまずきの類型と対処法に関する知識」を豊富に有し,それらを中核に授業中の「出来事の予兆」に気づき,言語的相互作用を適切に展開しているという関係を学校教育現場で実証することである。 上述した研究目的を達成するために,今回,1年目の目標として次の2点を立案した。すなわち,【1】アメリカの体育授業における教師の「身体-感性-言語」の関係に関する論理的仮説を導出した。具体的には,Sensitivity研究の第1人者であった,アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究を批判的に概観し,教師の「身体-感性」の関係性を検討した。また、【2】優れた教師は本当に体育授業中の「出来事の予兆」への気づきと言語相互作用とが関係するのか検討するため,小学校教師12名を対象に,同一の課題解決的指導法の体育授業を一単元にわたって実施してもらい,両者の関係を検討した(1年目)。 その結果、Sensitivityを感性と直訳することには疑義があったこと、感性とはAwarenessと捉えられること、卓越した教師と言われた実践者の一連の著書より、優れた教師の身体と感性は密接に関係するが両者の間には関心が介入している可能性の高いことが、それぞれ導出できた。また、優れた教師ほど言語相互作用を多く展開しており、そこでの言語と体育授業中の「出来事の予兆」への気づきとの多くが対応する関係が認められた。これより、より良い言語的相互作用の展開するためには、「出来事の予兆」に気づくための準備が重要であるものと考えられた。 以上のことから、優れた教師は「運動の知識」と「子どものつまずきの類型と対処法に関する知識」を豊富に獲得し,その知識を中核に授業中の「出来事の予兆」に気づき,言語的相互作用を適切に展開できるとする研究仮説は妥当であるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題として,下記の2点を設定した。すなわち、【1】アメリカの体育授業における教師の「身体-感性-言語」の関係に関する論理的仮説を導出した。具体的には,Sensitivity研究の第1人者であった,アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究を批判的に概観することで,教師の「身体-感性」の関係性を検討した。また、【2】優れた教師は本当に体育授業中の「出来事の予兆」への気づきと言語相互作用とが関係するのか検討するため,小学校教師12名を対象に,同一の課題解決的指導法(フラッグフットボール)の体育授業を一単元(8時間)にわたって実施してもらい,両者の関係を検討した、の2点である。 1年目では、概ね上記2つに関わった研究データの収集・整理は終えることができた。その大きな理由は、アメリカのクルト・レヴィン氏を中心とした先行研究の収集が可能であったこと、学校教育現場の協力により無事に授業研究を実施することが出来たことが大きな理由として挙げられる。とりわけ、後者については、学校現場の先生方が忙しい中で授業研究の打ち合わせに時間を割いてくれたこと、関係する保護者や子どもたちが快く調査協力に応じてくれたことが関係している。また、天候による影響が少なかったことも順調に研究が進展している理由である。2年目についても、引き続き学校教育現場からの協力を得つつ研究を推進していければと願っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目については、優れた教師の「出来事の予兆」への気づきは本当に「運動の知識」より生起するのか検討するため,小学校教師13名を対象に,同一の課題解決的指導法(走り幅跳び)の体育授業を行ってもらい,半構造化インタビュー,「ゲーム理論」における「展開型」表現様式の作図,「出来事」調査票からなる三点分析法を用いた質的分析より,「出来事の予兆」への気づきと「運動の知識」との関係を検討することを主たる目的とした年度になる。これは、研究計画書作成時に予定していた通りのものである。 また、今後の研究の推進の方向性として、1年目で得られた研究成果を学術論文や紀要雑誌、学会発表によって公開する方向で予定している。
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