2017 Fiscal Year Research-status Report
戦後三重県の教育制度に関する史料的研究-教育委員会議事録の整理を中心として-
Project/Area Number |
15K04261
|
Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
井上 兼一 皇學館大学, 教育学部, 准教授 (10440645)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 教育委員会 / 被占領下 / 三重県 / 教育制度の構築・整備 / 議事項目の整理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究活動については、前年度までの作業を継続するため、三重県教育委員会に関係する資料蒐集を行った。また三重県議会にも着目して、そこでの教育関係議事のほか、戦後初期・被占領下の教育改革に関する資料(文部省、GHQやCI&Eなど)の蒐集に努めた。蒐集にあたっては、紙媒体の複写のほか、デジタルカメラでの接写撮影など、多様な方法で入手を試みた。 当初、報告書を刊行する予定であったため、研究協力者とともに一次史料の筆耕作業を行い、また三重県教育委員会においてどのような議論が展開したのか把握するため、議事題目の整理を進めた。昭和23年の同委員会発足から昭和26年度(昭和27年3月)にかけて、約600の議題(延べ数)が上程されて審議がなされた。報告事項を含めると、相当な数の項目が扱われていたことが分かってきた。 これらの審議事項に対して、三重軍政部からの指導や指示があったのか、教育委員会が主体的に改革を進めたのかを判断しながら、特徴的な事案や重要な案件について概説する予定であった。研究作業を通じて、教育委員会側の資料については充実してきたが、その一方で占領軍の報告書(マンスリー・レポートなど)と突き合わせて検証する必要が出てきた。これらの資料については入手が不十分であったため、基礎調査や分析が遅れることとなった。 平成30年度については、地方軍政部資料の検討もふまえて、三重県教育委員会の組織づくりや制度構築の実態について考察し、まとめたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗状況について、遅延している状況にある。資料蒐集に関しては、昨年度は学生の補助・アルバイトを得て、集中的に作業を進めることができた。三重県教育委員会や県議会の教育関係議事については、戦後初期のものを入手するなど、検証に必要な資料を得ることができたことは成果であった。 また教育委員会の議事項目の筆耕および整理の作業もはかどり、ひととおり通覧できる表を作成することができた。このような報告書の下地になるデータをまとめることができたことは、研究代表者として評価できると思われる。 しかしながら、昨年度は想定外の状況が発生して、予定どおりに研究を進めることができなかった。本研究課題については、研究協力者(2名)と共同で作業を行っている。両名とも高齢であるため、平成29年度中に病気療養や手術をする機会があり、研究会を十分に重ねることができなかった。このようなやむを得ない事態が発生したことは、悔やまれた点である。 さらに研究作業を進めていく過程で、資料の不備や検証する資料が不足していることが、後々分かってきた。そのため、当初予定していた報告書の作成については断念することになり、本科研費の補助年限を1年間延長した次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の反省のもと、4月中には研究会を開催して、研究協力者ともども本年度の研究活動と到達点を確認した。また具体的な作業内容についても、研究協力者と分担して行うものと研究代表者が集約して整理する事項など仕分けを行った。GHQ、CI&E、三重軍政部に関する資料に関しては、マイクロフィッシュなどで入手する予定である。 また被占領期の教育改革について研究を行っている研究者と交流して、本研究課題に参考となる情報を得たいと考えている。被占領期の文献・資料に関しては、国立国会図書館(憲政資料室)や明星大学戦後教育史研究センターなど、収蔵が充実している研究機関が国内にある。これらの研究機関に足を運んで、地方軍政部の関係資料の蒐集作業を進める予定である。少なくとも、夏期休業中にはこれらの基礎作業(資料蒐集やデータ整理)に区切りをつけ、報告書の作成作業を進展させたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
当初の予定として、平成29年度末に報告書を刊行するつもりであった。平成30年2月まで、データの整理・資料の作成作業を進めていたが、年度末までに刊行する目途が立たないことが分かり、翌年度(平成30年度)に予算を繰り越す申請を行った。次年度使用額として残っている金額は、報告書の作成費分である。 約37万円の予算が残っており、これについては平成30年度中に報告書を完成させたいと考えているため、その刊行費に充てる予定である。
|