2016 Fiscal Year Research-status Report
私的領域を大規模に介在させた教育制度改革の成功事例に関する検証的研究
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15K04314
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
広瀬 裕子 専修大学, 文学部, 教授 (40208880)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 私的セクター / 教育制度改革 / ハックニー / ラーニング・トラスト方式 / ドンカスター / 失敗自治体 / NPM / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、私的セクター(企業やNPOなど)を教育再生事業にドラスティックに関与させたケースの成功事例を検証し、教育制度改革への応用の可能性を提案することを目的としている。 教育における公私二領域の関係構造の変化に伴って、今までにない公私関係のタイプの教育政策や行政機構改編事例が登場している。こうした事例は、公共と私領域に関する理論に再構成を迫ると同時に教育改革手法に関する新しい知見を提供している。本研究では、改革の成功事例を特定し、事例の経緯の詳細を把握することで成功の背景と教育政策への応用の可能性を特定するとともに、教育改革における公私理論の再構成を試みようとしている。 本研究が的確な事例として注目するのは、ロンドン・ハックニー区のラーニング・トラストによる改革である。同区は教育運営の破綻を自力再生することが不可能になった時点で中央政府により失敗認定されて、全権限が非営利民間組織ラーニング・トラスト(TLT)に奪取された。TLTは、10年の契約期間の間に顕著な改革成果を上げた。 昨年度は、成功したTLTによる改革手法はどのようなものであったのかの詳細を明らかにするために、改革の実務をリードしたA.ウッドを9月に9日間招聘し、シンポジウムを含め3種類の研究会を行い、公式公開資料では明らかにされていなかったTLT設立の経緯、TLTの改革手法の特徴、改革成功のポイントなどについて情報を得た。 その情報を元に、今年度はTLTと類似の改革手法が適用されたドンカスターで改革を主導するチームから聞き取り調査を行うとともに、教育省の担当者から失敗自治体の再生計画についての聞き取りを行った。並行して、収集した情報の整理と、一般図書への論文執筆を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教育省は、ハックニーで成功したラーニング・トラスト(TLT)方式を用いて、他の失敗自治体の再生を始めており、ハックニー改革を率いたA.ウッドの支援のもとにドンカスター及びバーミンガムにコミッショナーの投入を行った。これらの改革経緯の詳細を知るべく、9月に教育省とドンカスターを訪問し、関係者から聞き取り調査を行った。 ドンカスターでは、9月8日に、改革を主導するトラストの改革委員会メンバーから改革の経緯、実情、成果、問題点について聞き取り調査を行った。メンバーは以下の通りである。Paul Moffat (CE), Peter Featherstibe (Business Manager), Mark Douglas (Chief Operating officer), James Thomas (Head of Performance and Business Intelligence), Jackie Wilson (Director of Performance, Quality & Innovation)。 教育省では、9月6日に、失敗自治体改革を担当している部署の担当者に聞き取りを行った。すなわち、以下の人たちである。Kate Jarman (Voluntary Trusts Policy Children’s Social Care)、Louise Lawrence (Intervention case lead), Ian Valvona (Head of Interventions Unit)。 教育省の聞き取り調査で、ハックニーで成功した介入方式の改善プログラムが、全国的に失敗自治体に適用され、30の自治体がリストアップされていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、改革後のハックニー区の教育状況を追跡調査するとともに、ハックニー区の改革手法を応用した他の地域の改革について調査を行う。具体的な地域としては、教育省が改革対象としてリストアップしている地域から選定する。
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Causes of Carryover |
人件費を予定より節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費及び物品費で使用する予定になっている。
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Research Products
(1 results)