2017 Fiscal Year Research-status Report
共通教材を活用した日本,韓国,台湾の教員養成における市民的資質の育成
Project/Area Number |
15K04423
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
真島 聖子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (10552896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教員養成 / 市民的資質の育成 / 社会的課題 / 共通教材の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速な勢いでグローバル化する社会では,複雑で相反する多様な価値観が存在する中,事実を丁寧に理解した上で,相互に寛容な姿勢をもって接することがすべての成員に求められる。とりわけ,次世代の市民を育てる学校教育においては,人権感覚や市民的資質を備えた教員の育成が不可欠となっている。本研究は,このような視点から,日本,韓国,台湾という同様の民主的市民国家の教員養成において,共有可能な社会的課題に関する共通教材の開発と授業実践に取り組んできた。平成29年度の研究成果は,以下の3点にまとめることができる。 1.LGBTQをめぐる社会的な課題をテーマに日本と台湾の先行研究の整理を行い,学校教育での実践事例について検討を行った。また,LGBTQの当事者への聞き取り調査を実施したり,学校教員へのインタビュー調査を行うなどして,学校教育におけるLGBTQの課題を整理した。台湾の留学生の協力を得て,日本と台湾における共通教材の開発を検討し,授業実践に向けて計画を立てた。 2.韓国の晋州教育大学校と日本の愛知教育大学との国際交流プログラムを企画・運営し,学生の相互交流や相手国の附属小学校で授業実践を組み込んだプログラムが,どのような市民的資質を育んでいるのか,学生の学びを記したレポートから明らかにした。 3.当初は,日本,韓国,台湾の3か国を研究対象としていたが,H28年度からインドネシアのスラバヤ大学と共同研究を進め,H29年度はスラバヤ大学で行われた国際学会での研究発表に加え,ジョグジャカルタ大学で地震や津波などの自然災害と防災教育をテーマにインドネシアの学生を対象に授業を実施した。インドネシアと日本は,ともに地震や津波,火山の噴火など自然災害に多く遭遇する共通点があり,防災・減災・復興教育の実践研究の必要性が高まっている。共通の社会的課題の解決に向けて,今後一層共同研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
台湾での授業実践が実現されていないが,台湾からの留学生の協力を得て,台湾の学校教育と日本の学校教育が抱える共通の社会的課題としてLGBTQをテーマに研究を進めることができている。また日本のLGBTQの当事者や学校関係者からの聞き取りを行うことができ,社会的課題の解決に向けて,共通教材の開発を検討することができた。 韓国と日本の共通の社会的課題については,教育が抱える課題が共通テーマとなり,教員養成の学生の問題意識や相互交流を経て育まれる市民的資質について明らかにすることができ,今後の研究の見通しを持つことができた。 新たに研究対象に加えたインドネシアのスラバヤ大学とジョグジャカルタ大学では,国際学会で研究の成果を発表したり,インドネシアの学生を対象に日本とインドネシアの共通の社会的課題の一つである自然災害と防災教育について授業実践を行った。今後,共同研究を一層進めていくことについて共通理解を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,研究最終年度として,次のことを計画している。 1.韓国晋州教育大学校と愛知教育大学,韓国晋州教育大学校附設初等学校と愛知教育大学附属名古屋小学校との交流プログラムを発展させ,日韓の現代的教育課題や日韓の教員養成に求められる市民的資質について討論会を開催する。また,小学校での授業実践やフィールドワークを通した歴史文化体験,ホームステイなどを通して,どのような学びが得られ,教員養成に必要な市民的資質についてどのような認識の変化が現れたのかについて明らかにする。 2.インドネシアスラバヤ大学,ジョグジャカルタ大学との共同研究を進め,インドネシアと日本に共通する社会的課題である自然災害と防災・減災・復興教育について教材開発を進め,両国で授業実践を行う。 3.LGBTQをめぐる社会的課題について,日本と台湾の学校教育における課題を明らかにし,課題の解決に向けた共通教材の開発を行う。 4.上記1~3の研究成果について学会で発表したり,論文を執筆したり,シンポジウム等を開催して広く研究成果を公表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成30年度に,日韓国際交流プログラムの開催,シンポジウムの開催,国際学会等での発表,研究成果報告書の作成などを計画しているため,平成29年度の予算の一部を平成30年度に繰り越すことで,研究の推進に支障が出ないようにした。その分,アンケートの整理補助や翻訳等は,研究代表者が行い,次年度の研究費の確保に努めた。 (使用計画) 平成30年度は,研究の最終年度となるため,研究成果の講評のために,国際学会,国内学会での発表,日韓国際交流プログラムの開催,インドネシアの研究協力者とのシンポジウムの開催,研究報告書の作成などを行う予定である。旅費や会議費,教材開発に必要な経費等の執行は適切に行う。
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