2015 Fiscal Year Research-status Report
分子間重合酵素リアクターによる高効率な生理活性物質の合成技術の開発
Project/Area Number |
15K04639
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山口 浩 東海大学, 阿蘇教養教育センター, 准教授 (00466236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固定化酵素 / 酵素リアクター / 酸化酵素 / PEGA樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高濃度に固定化した酸化酵素リアクターによる、低コスト・低環境負荷かつ効率の良い生理活性物質の合成技術の開発を行う。初年度は研究計画に基づき、酸化酵素のマイクロビーズ表面への高濃度固定化条件の確立と酵素リアクターの作製を行った。 酸化酵素にはラッカーゼとチロシナーゼを利用した。2種の酵素の等電点は酸性であり、以前の研究から酵素の固定化にはポリリジンが必要である。高い酵素重合率と触媒活性を両立する為、酵素濃度、ポリリジンの濃度および架橋剤であるアルデヒド濃度を検討した。マイクロビーズには、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS基)修飾アガロースビーズを利用した。NHS基は酵素もしくはポリリジンのアミノ基と容易にアミド結合を形成し、ビーズ表面に酵素を固定化できる。加えて、酵素はポリリジンが形成する重合体へ取り込まれることでビーズ表面へ積層され、高濃度の酵素を固定化できると考えたためである。酵素反応は、少量のビーズを用いてサンプルチューブ内で簡便かつ迅速に行った。その結果、酵素は期待通りに高濃度でアガローズビーズへ固定化できたが、触媒反応により得られた生成物がアガロースビーズに吸着し、回収が困難であった。 その為、次にマイクロビーズとして、アミノ基で修飾されたPEGAビーズを用いた。その結果、酵素は高濃度で固定化されかつ、反応生成物の吸着も観測されなかった。加えて、40回以上の繰り返し利用が可能であった。この事は酵素分子の立体構造は損なわれずに、高濃度でかつ自由度が低い酵素重合体が形成されることで、長時間その触媒活性が持続し安定性が増加したと考えられた。また、PEGA樹脂は有機溶媒中でも使用可能のため、2年度以降の合成応用での反応条件検討に有用な性質と期待された。 最適条件で得られた酵素固定化アガロースビーズはガラスカラムに充填し、酵素リアクターとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は、酸化酵素のマイクロビーズ表面への高濃度固定化条件の確立と酵素リアクターの作製であった。固定化条件の最適化はできたが、マイクロビーズの選択に時間が必要であったため、酵素リアクターの性能評価(反応処理量、連続使用時間、使用回数、水溶性有機溶媒への耐性)は完了していないが、評価項目は上記の少量のビーズを用いたサンプルチューブ内での反応と等しいため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、作製した酵素リアクターを用いた生理活性物質(ポリカテキン)の合成法の確立およびその生理活性評価を行う。 各種溶液の送液はシリンジポンプを用いる。モノマー分子は、T字型のコネクターを用いて酵素リアクターの酸化反応により生成されたラジカル分子と混合し、重合反応させる。ラジカル分子の生成量は、その後のモノマー分子の重合反応に重要と考えられる。その為、酵素リアクターによる処理量は、メディエーター濃度、反応温度、送流速度を調節することで、最も効率のよい条件を見いだす。また、酵素反応はpHが5付近で行うが、重合反応ではpHを変える必要も予測される。この場合は、モノマー分子を溶解している溶媒に酸もしくは塩基を加える事でpHの調節が可能と考える。 これまでの報告では、生理活性は重合度が2~4のポリカテキンに見られる。酵素リアクターを用いた系において、重合度の調節は、合成効率に大きく影響することが予想される。そこで、モノマー分子の流入速度、重合反応温度、重合反応部のチューブの長さと内径を調節することにより、モノマーの重合度を制御する。また、重合反応では溶存酸素が、その反応効率を低下させる可能性がある。その為、モノマー分子溶液を脱気することで、酸素濃度を低く抑え、反応収率を改善する。 ポリカテキンの抗酸化活性はラジカル消去活性試験およびペルオキダーゼを介した過酸化水素消去活性試験で評価する。また、ポリカテキンによるα-グリコシダーゼ活性阻害実験を行い、2型糖尿病の経口投与薬の指標を評価する。加えて、培養細胞レベルでの生理活性評価も行う。これら活性測定の結果をもとに、高い生理活性を有するポリカテキンの重合度を決定し、上記の反応条件を再検討することで、酵素リアクターによる高い生理活性を有するポリカテキンの効率の良い合成法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
消耗品購入において、購入金額は予定よりも安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試薬等の消耗品購入に使用する。
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