2016 Fiscal Year Research-status Report
角型比が高い垂直磁化膜の磁化反転における前駆現象の解明
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15K04658
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
安居院 あかね 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員(定常) (20360406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁化過程 / 垂直磁化膜 / コンプトン散乱 / 磁気円二色性 / 磁気記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は希土類(RE)--遷移金属(TM)垂直磁化膜について、スピン、軌道、元素別に磁化反転現象を観測し、ミクロスコピックに磁化反転機構を解明することを目的とする。特に、磁気記録材料として実用に近い角型比の高い希土類-遷移金属垂直磁化膜において、成膜条件の違いがどこに現れるかを詳細に捉え、高密度記録の高速書き込み読み出し技術に重要な磁化反転機構を解明する。スピン、軌道、元素別のミクロスコピックな磁化過程の観測には磁気コンプトン散乱及び磁気円二色性吸収の印加磁場依存性を利用する。 RE-TM垂直磁化膜は磁気記録材料の母物質として知られている物質である。構成要素のREとTMは共に磁性元素であり、その種類及び組成比により膜の磁気的性質が大きく変化する。従来、磁気特性の評価には専らVSM(試料振動型磁力計)やSQUID(超伝導量子干渉素子)などのマクロスコピックな測定が用いられている。今後の磁気記録の更なる高速化には、スピン磁気モーメント、軌道磁気モーメントといったミクロスコピックな観点からの磁化反転機構の理解を目指す。 H28年度はTb-Co系垂直磁化膜について、磁気コンプトン散乱を利用したスピン選択ヒステリシス測定とSQUIDによる全磁化測定を組み合わせ、軌道選択ヒステリシスの算出を行った。特に、補償組成近傍の組成比の異なるTbxCo100-x (x=13-20)垂直磁化膜について磁気コンプトン散乱測定を行った。 また、モデル計算を行うための計算環境の整備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度はTb-Co系垂直磁化膜について、SPring-8のBL08Wにおいて磁気コンプトン散乱を利用したスピン選択ヒステリシス測定を行いSQUIDによる全磁化測定を組み合わせ、軌道選択ヒステリシスの算出を行った。特に、補償組成近傍の組成比の異なるTbxCo100-x (x=13-20)垂直磁化膜について磁気コンプトン散乱測定によるミクロスコピックな、つまりスピン磁気モーメント、軌道磁気モーメント、TbとCoの成分別の磁気モーメントに着目した磁化過程を観測した結果、この組成条件ではスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメント、およびTbとCoの磁気モーメントはフェリ的になっていることが観測された。それらのどちらが優勢モーメントを担うかは組成比によって変化することが観測された。また、それが反転する組成として補償組成がx=17であると算出できた。各成分の比の値は、組成比によって変化するが各試料において磁場に対しては一定であることが示された。比が一定であるということは、印加磁場に対する応答がスピン磁気モーメントと軌道磁気モーメント、およびTbとCoの磁気モーメント、で同じ振る舞いをしていることを示す。この系ではスピン軌道相互作用が強く、磁化反転は系全体で協同的に一斉に起きてるいることが示唆された。 また、モデル計算を行うための計算環境の整備を行った。計算機としてはIntenl Xeon CPU E5-1650v4 3.60GHz 6コアのワークステーションを選定し、電子状態計算を行うためソフトウェアCRYSTAL14をインストールした。 本年度の目標の大部分は達成されており、研究計画の進捗状況はおおむね順調と考えている。 これらの結果については磁気学会、物理学会でもすでに発表し、他の研究者とも議論を進めている。また、国内誌に解説記事も寄せており、研究成果を広く発信している。
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Strategy for Future Research Activity |
<成膜条件による磁化反転挙動の見極め>系全体でそろって磁化反転が起きる場合と前駆的な挙動が見られる場合の条件の違いを見出すため、H29年度は成膜条件の異なる試料を新たに成膜して検証する。 <総和則の適応>H29年度は軟X線磁気円二色性測定を行い総和則によって、<Sz>、も行っていく。 <シミュレーション>第一原理計算に基づくシミュレーションを行う計画である。 <成果展開>また、最終年度であるので学会発表、論文発表を進めていく。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額(B-A)」欄が「0」より大きくなったのは、パソコン用ソフトウェアの購入が遅れたのが主な理由である。導入するソフトウェアの検討も済んでいるので速やかに執行する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費の主な支出は、描画のためのパソコンの整備とグラフソフト等の整備を考えている。また、国際会議IUCr2017参加のための外国出張費にインド7日間の滞在で800千円程度と見積もっている。また、論文執筆のための英文校閲の費用は150千円程度考えている。 その他、国内学会への参加60千円と考えている。また、実験用の冶具、真空部品などの消耗品の購入、などを考えている。
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[Journal Article] Glassy distribution of Bi3+Bi5+ in Bi1-xPbx NiO3 and negative thermal expansion induced by intermetallic charge transfer2016
Author(s)
K. Nakano , K. Oka, T. Watanuki, M. Mizumaki, A. Machida, A. Agui, H. Kim, J. Komiyama, T. Mizokawa, T. Nishikubo, Y. Hattori, S. Ueda, Y. Sakai, M. Azuma
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Journal Title
Chemistry of Materials
Volume: 28
Pages: 6062-6067
DOI
Peer Reviewed
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