2017 Fiscal Year Research-status Report
キッカー電磁石励磁に伴う粒子検出器へのサージノイズの完全除去
Project/Area Number |
15K04746
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
入江 吉郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (00124173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 寛 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 先任技師 (60391786)
小嶋 健児 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60302759)
反保 元伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (50630399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キッカー電流のサージ成分 / 近傍の粒子検出器へのノイズ / 低域通過(ローパス)フィルタ / キッカーパルス本体が誘起するノイズ / 電磁遮蔽効果の高い同軸ケーブル / 高周波帯域特性に優れたコンデンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(平成28年度)は可飽和インダクタに代わりローパスフィルタ(LPF)を用いてキッカー電流からサージ成分を除去する試験を行ったが、時間の制約で充電電圧は5キロボルトまででそれ以上の高圧試験は出来なかった。本年度は、実験のセットアップ工程を効率化し時間を短縮したことで十分な実験時間が確保できた。試験では通常使用する充電電圧の25キロボルトまでの測定を行い、キッカー電流の立上り時間を犠牲にすることなしにサージ成分をほぼ除去することに成功した。なお、LPFのカットオフ周波数は5.4メガヘルツである。
ノイズ検出器として、キッカー電源及びキッカー電磁石に隣接する超低速ミュオンラインに設に置されたマイクロチャンネルプレート(MCP)を用いた。この検出器にはキッカーノイズ低減を目指し電磁遮蔽効果の大きい5D-FB同軸ケーブルが使用されている。今回、サージ成分が除去されたことでノイズ信号にどの様な影響が出るかを調べた。その結果、「ほとんど影響しない」ことが判明した。これは、サージ電流がもつ10メガヘルツ以上の周波数成分がノイズとして直接的に関与していないことを示すものである。そして、現存するノイズは1マクロ秒のパルス幅を持つキッカーパルス自体が検出器周辺に高調波の寄生振動を誘起するために発生するものと考えるべきである。また、高電位箇所(30キロボルト)に設置されているMCPには150ミリボルトピークのノイズが発生しているが、これが取付けられている真空チェンバーをコンデンサーでアースへ接続すると30メガヘルツまでのノイズが非常に低減されることが分かった。しかし、50メガヘルツ近傍に残るノイズは真空コンデンサー等の高周波帯域特性に優れたコンデンサーを用いることにより除去できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
キッカー電磁石励磁に伴う粒子検出器へのサージノイズを除去するため、申請書に記載した可飽和インダクタを用いてその発生源である電磁石電源内部においてサージ電流を発生させなくする試験を行った。しかし、用いた可飽和インダクタの性能評価が不十分だったため期待する結果は得られなかった。現在これをローパスフィルタに替えてサージノイズ除去の試験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
前節「研究実績の概要」に書いたように、ローパスフィルタを用いてキッカーパルスに含まれるサージ成分をほとんど除去することに成功した。しかし、このフィルタ取付けによって、キッカーパルス波形フラットトップ部が狭くなるという歪みも発生している。これの補正のため、キッカー電源のパルスフォーミングネットワークを一部改造すること、およびローパスフィルタのカットオフ周波数を微調整することを検討する。
粒子検出器に対するキッカーノイズの発生は検出器の種類、アース接地状況、信号線の電磁遮蔽状況、場所(ノイズ源からの距離)等によって異なることがこれまでの実験を通して分かっている。ノイズの周波数解析を行い、適切なコンデンサーを選ぶことでアース接地状況を改善し、また、信号線として可能な限り電磁遮蔽効果の大きい同軸線を採用することでノイズの完全除去を目指す。
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Causes of Carryover |
キッカー電磁石励磁に伴う粒子検出器へのサージノイズを除去するため、可飽和インダクタを用いてその発生源である電磁石電源内部においてサージ電流を発生させない試験を行った。しかし、用いた素子の性能評価が不十分だったため期待する結果は得られなかった。故に、研究の方向転換が必要となり研究の遅れが生じた。その結果、次年度使用額が発生した。
現在、可飽和インダクタをローパスフィルタに替えてサージ電流を抑止することに成功している。しかし反面、キッカーパルス波形に僅かながらも歪が発生しているため、これを改善する対策を講じる。また、粒子検出器に対するノイズ環境もこの数年で大幅に変化しており現場でのノイズ対策も重要性を増している。低インピーダンスアースラインの設置、コンデンサーによる高性能フィルタリング、信号線として電磁遮蔽効果の大きい同軸線の使用等により粒子検出器へのキッカーノイズの完全除去を目指す。
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