2017 Fiscal Year Research-status Report
ラグランジュファイバー空間の微分幾何とフレアー理論
Project/Area Number |
15K04847
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
野原 雄一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60447125)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フレアー理論 / 完全可積分系 / ミラー対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
n次元複素ベクトル空間内の2次元部分空間全体のなすGrassmann多様体 Gr(2,n) に対し、そのミラーはある非コンパクト複素多様体 Y とその上の正則関数 W の組 (Y,W) として与えられる。これまでの研究で、Gr(2,n)上の適当な完全可積分系のLagrangeトーラスファイバーに対し、それに境界を持つ正則円板を数え上げることにより定まる「ポテンシャル関数」を考えると、ミラーのほとんどの部分を構成できることを示した。一方で、この方法では復元できない (Y,W) の部分にも重要な情報が含まれることがあることが分かっている。このミラー側で欠けている部分は完全可積分系の特異ファイバーに対応すると考えられるため、2017年度はその特異ファイバーを調べることを中心に研究を行った。上述のミラーのFloer理論的構成を特異ファイバーにまで拡張するためには、Lagrangeはめ込み(自己交差を持つLagrange部分多様体)に対するFloer理論が必要となるが、Gr(2,n)の場合は特異ファイバーの次元が高いだけでなく、自己交差も高次元で起こっているため、この場合を直接調べるのは難しい問題である。そこで、まず複素2次曲面の場合に完全可積分系の特異ファイバーを詳しく調べた。複素2次曲面は単にGrassmann多様体のトイモデルであるだけでなく、4次特殊直交群の旗多様体でもあり、これ自身ミラー対称性や表現論で重要な空間である。2次曲面の場合には、完全可積分系の特異ファイバーやそれに境界を持つ正則円板の幾何を詳細に調べることができた。これはGrassmann多様体の場合を考察する際の重要な手掛かりになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Grassmann多様体のミラーをシンプレクティック幾何の立場から理解するためには、上述のようにLagrangeはめ込みに対するFloer理論が必要となることが明らかになった。Grassmann多様体の場合に必要となるのは、自己交差が点ではなく高次元の部分多様体で起こっている場合の理論であるが、それはまだ完全には確立されていない。そのため、基本的な部分から考える必要があり時間がかかっているが、Lagrangeはめ込みに対するFloer理論の専門家と議論をしながら研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、Grassmann多様体内の特異LagrangeファイバーのFloer理論とミラー対称性の関係について調べる。今後もLagrangeはめ込みに対するFloer理論の専門家との議論をしながら研究を行う予定である。 また、Grassmann多様体(より一般に旗多様体)とそのミラーは、クラスター代数やユニタリ群の表現の“標準基底”など、表現論とも深く関わっている。特に、最近 Alekseev-Lane-Liが発表した、ある種の完全可積分系とクラスター代数の関係に関する結果は本研究と深く関わると思われるため、彼らの結果を我々の扱っている状況に拡張することも考えたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究集会やセミナーへの講演者の招聘を計画していたが、講演者が自身の研究費から旅費を支出するなどにより、旅費の額が予定より少なくなった。 (使用計画) これまで使用していたノートPCの調子が悪くなったため、前年度の残額を使いPCを買い替える。また、2018年度も講演者の招聘を予定しているため、残額の一部はその旅費にも充てる。
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