2016 Fiscal Year Research-status Report
消散構造を持つある偏微分方程式の解の漸近形とその応用
Project/Area Number |
15K04958
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池畠 良 広島大学, 教育学研究科, 教授 (10249758)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 波動方程式 / 摩擦項 / 粘性項 / 漸近展開 / Fourier解析 / 藤田指数 / 最良減衰率 / 退化する摩擦係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、強い摩擦項を伴う波動方程式の全空間における初期値問題の解の時間無限大における漸近形を2014年にJ. Differential Equations誌上で発表した。一方で、弱い摩擦項をともなう波動方程式の対応する問題の解の漸近形がガウス核の定数倍であることは研究代表者を含むこれまでの多くの研究者によって報告されている。そこで、それら強い摩擦項と弱い摩擦項の2つの項を同時に伴う波動方程式の初期値問題を考察し、対応する解の時間無限大における漸近形が、実は弱い摩擦項の方に引っ張られガウス核の定数倍になることを導出した。”強い”摩擦項の影響は実は“弱い”ことを見抜いた。この結果はAsymptotic Analysis誌上に掲載された。 先のAsymptotic Anlysis誌上に掲載された結果は、線形の方程式に限定された結果であったが、当然次はそれの非線形問題への応用について考察するのが自然な流れである。研究代表者は、共同研究者と対応する巾型非線形項とダブル摩擦項を持つ波動方程式の初期値問題の藤田型臨界指数特定問題を考察した。巾型非線形項の指数が藤田指数より真に大きい場合に、十分小さい初期値に対する時間大域解を空間1,2次元の場合に構成し、更に巾型非線形項の指数が藤田指数より小さい場合には適切な初期値についての対応する解が時間大域的に存在しえないことを証明した。これらの結果は、Nonlinear Analysis誌上に掲載された。 一方で、ブラジル人数学者との国際共同研究として構造的な摩擦項と回転慣性力を考慮したプレート型方程式の初期値問題を考察し、その解の最良な減衰率を特定し、さらに解の漸近形を抉りだすことにも成功した。この結果もJ. Mathematical Analysis and Applications誌上に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況であるが、H27年度版にすでに記載のような好調な状況と上記H28年度の3本の国際的なSCI論文掲載結果からもわかるように、順調に目標以上の結果を出しているからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は日本人共同研究や大学院生と、構造的な摩擦項を伴う波動方程式の初期値問題を考察して、その構造的摩擦を決定するパラメータに応じた解の漸近形の分類について考察する。また、研究代表者が考案した方法で、波動以外にもプレート型方程式についても同様の考察を行う。更に、Navier-Stokes方程式への応用などについても考察する予定である。できれば、変数係数を持つ波動方程式のエネルギー減衰についても、その空間変数に依存した摩擦項の摩擦の効き具合に応じたエネルギー減衰オーダーを特定する問題も考察したい。これらについては、ブラジルとの国際共同研究及び国内共同研究を中心に行う予定である。
|
Research Products
(7 results)