2017 Fiscal Year Research-status Report
消散構造を持つある偏微分方程式の解の漸近形とその応用
Project/Area Number |
15K04958
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池畠 良 広島大学, 教育学研究科, 教授 (10249758)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 波動方程式 / 摩擦効果 / 粘性効果 / 漸近形 / 微分損失構造 / 非有界領域 / 初期値問題 / エネルギー減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度における研究の成果は以下の通りである。 福岡工大の共同研究者である竹田氏との共同研究において、空間方向に非有界な摩擦係数を持つ線形波動方程式の全空間における初期値問題を考え、その弱い意味での解の一意存在と対応する全エネルギーの速い減衰率の導出に成功した。これは日本数学会関数方程式論分科会発行の専門誌Funk. Ekvac.において掲載決定となったが、プレプリントの段階から早くもポルトガル‐スイスの研究者達によって引用されるなど国際的な関心の高さを予感させるものとなっている。これまで本質的に「非有界」な変数係数を持つ場合の波動方程式それ自体が扱われてこなかったという意味において、この分野における先駆的な研究であるといえよう。また、ブラジルのサンタカタリーナ大学の共同研究者であるRuy C. Charao氏との共同研究においては線形化された圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題が扱われ、その解の時間無限大における漸近形の新たなる導出方法についての一考察を行い、国内の数学専門誌Hokkaido Math. J.から掲載決定となった。さらに、私の研究室所属の大学院生である井餘田氏との共同研究によって、「非常に」強い粘性項を持つ定数係数の波動方程式の初期値問題を扱い、その(一意)解の時間無限大における漸近形を導出し、さらに支配方程式特有の「微分損失構造」を抉り出すことに成功した。応用として、対応する解のあるノルムの上と下からの最良な減衰率を特定し、特に空間1,2次元においては波動からの影響が支配的であり、またその解の拡散構造が完全に消滅していることをエネルギーとL^{2}ノルム との比較で観察できた。これも国際的数学専門誌のMath. Meth. Appl. Sci.から掲載決定となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記3本の論文の受理に加えて、現在、福岡工大の竹田氏との共著論文2本が査読後の第1回修正中であり、当初の予定より順調に進んでいる。当初予期していないことが起こった場合で研究が遅れた場合は、(海外も含めた)当該専門家を研究費で招聘し、専門的知識の提供や最新の研究成果についてのレクチャーを受ける予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず国外の関連する研究者を早速所属大学に招聘し、関連する研究課題についての共同研究を模索する。また、同時に日本人研究者を数名招いて、直接最新の研究課題についての情報提供を受け、自分の研究課題を模索する。私の研究室所属の大学院生と、現在抱えている研究課題について、今年度中に結果をまとめ国際誌に論文投稿すること、なども予定している。そのため、「研究旅費」を中心に科研費を使っていくことになるだろう。
|
Causes of Carryover |
当初、国外研究者(ブラジル連邦共和国サンタ・カタリナ大学数学科所属)を1名、当該年度の科研費で招聘する予定であったが、その準備の最終段階になって先方がVisa取得において、旅行業者とトラブルになったため、急きょ来日が不可能となり剰余金が生じた。平成30年度は、この剰余金も込めた旅費を使って、新たに国外研究者を招聘する予定である。
|
Research Products
(8 results)