2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05000
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
税所 康正 広島大学, 工学研究科, 准教授 (70195973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 敦 東海大学, 工学部, 教授 (80193473)
畑上 到 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (50218476)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA / クラスター損傷 / LET / G値 / 数理モデル / 確率論の応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、放射線照射によって生成される DNA のクラスター損傷とよばれる重篤な損傷の生成プロセスを、確率(数理)モデルを構築して解析し、放射線照射線量および LET(「線 エネルギー付与」,放射線がその飛跡周辺に電離を起こす密度を表現するパラメータ)に対するクラスター損傷数の依存性を予測することによって、高 LET 放射線の生物作用を理論的に裏付け、これらに合わせて出現する数学的問題を解決することにある。 本年度は、前年度までと同様に、分担者の伊藤氏と密接に議論を繰り返しながらこれまでの結果を論文にまとめる作業を行なった。 この研究過程で前年度に発見した、G値とよばれる、放射線の通過トラック上に作られる近接したspur間の距離によって、各suprで生成されるラジカル が、互いに打ち消しあって減少する割合を数理的に表現して実験値と比較することによって説明する問題についても研究を進めることができ、これまでの結果を放射線影響学会で発表することができた。この問題に関する研究は今後さらに発展させる予定である。 一方、本研究はこれらの現象を解析するなかで出現する数学的問題を解決することも目的にしている。G値の問題が、 飛躍と飛躍の間隔の長さによって次回の飛躍を「延期」する非マルコフ過程と密接に関係していることに気づき、この点についても、連携研究者の金川氏と連絡をとりながら調べているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クラスター損傷生成の、放射線量とLETに関する依存性を表現するために最適な確率モデルを構築する研究を進めて、この間に得られ た結果を研究集会で紹介することができた。今までの結果を論文にまとめて発表の準備をすすめた。 前年度までに発見したG値に関する問題について分担者の伊藤氏と議論を繰り返しながら研究を継続した。また、数学的な側面からもこの問題について研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続いて研究協力者達の協力を受けながら、分担者との共同研究を行う。 具体的には、クラスター損傷生成の確率モデルに関しては、損傷の修復を考慮したり、損傷の度合いを変えた場合の研究に進む。 G値に関する問題についても引き続き研究を継続する。 さらにその過程で出現した数学的問題を解決する。これらを実行するために、分担者と緊密な連絡をとり、得られた結果はさまざまな 研究集会で発表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 旅費の都合によって、年度内使用額が当初見込み額より少なくなったものである。 (使用計画) 今年度の当初予定額と前年度未使用額を合わせて、当初の研究計画調書にしたがって、研究分担者・研究協力者との研究打合せ、国際学会における成果発表などの旅費に使用する予定である。
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