2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K05014
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
羽部 朝男 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90180926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
タスカー エリザベス 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40620373)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子雲 / 大質量星形成 / 分子雲コア / 分子雲衝突 / 電離光子輻射輸送 / 磁場 / 内部乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子雲衝突により,大質量星形成が可能な高密度コアの形成条件を探るのが,本研究の目的である。今年度は,これまでの我々の研究成果をもとに,様々な大きさの分子雲を,衝突速度を系統的に変化させて衝突させて,それによって形成される高密度コアの性質を調べた。衝突分子雲の質量とサイズの組み合わせに対して,衝突する速度を系統的に変更すると,それに応じて形成される高密度コアの質量関数が系統的に変化することを見出した。特に重要なことは,我々の結果から,衝突速度が観測から示唆されている程度であると,高密度コアの質量範囲が,大質量形成に対応する範囲に限られることを示したことである。これは分子雲衝突と大質量星形成との密接な関係を示すものとして大変重要である。この内容は,論文として投稿中である。
この研究と並行して,これまでの計算では簡単のため衝突分子雲形状を球形としていた点を検討するために,銀河スケールの分子雲形成のシミュレーションから,衝突分子雲を選び出して,分子雲衝突の計算の準備を進めた。実際の分子雲に近い形状と内部乱流を持つ分子雲を仮定するためである。分子雲衝突のシミュレーションは,銀河スケールの計算よりもはるかに高空間分解能の計算が必要であるので,その方法についてテストを進め,高精度計算を行うのに適したモデルを選び出すことに成功した。次年度は,この成果に基づき,本格的な計算を行う予定である。また,衝突中の分子雲の中で大質量星が形成されると,それから電離光子が放出され,それによって最終的な高密度コアの質量関数に影響を与えると考えられることから,大質量星からの紫外光の高密度コア形成への影響を調べるための電離光子の輻射過程を取り入れた流体計算を実施し,基本的な計算に成功した。次年度に,この影響についても本格的な計算を実施する予定にめどをつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝突する分子雲の大きさや質量,速度,内部乱流を系統的に変化させて,分子雲衝突の計算を行い,高密度コア形成やその質量関数への影響を明らかにできた。その結果は,学術論文として登稿中である。 また,分子雲衝突の観測的研究を進めている名古屋大学の研究グループとワークショップを開催し,我々の数値シミュレーション結果と,観測グループの新しい観測結果の特徴を比較検討し,今後の研究方向を検討する上で有益な議論ができた。銀河スケールの分子雲形成のシミュレーション結果から,衝突分子雲を選び出して,高空間分解能で計算することも可能することができた。電離光子の輻射輸送を取り入れた計算も実施することが可能になり,次年度での計算の本格的な実施が展望できる。磁場に関しては,シミュレーションプログラムにおける取り扱いを確認しており,次年度で数値シミュレーションを実施することが可能となっている。以上,本研究で予定していた計画を順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの研究成果に基づき,研究を発展させる。具体的には,衝突分子雲の内部乱流や形状,衝突の仕方などをより現実的なものにするために,銀河スケールの分子雲形成シミュレーションから,衝突分子雲を選び出して,分子雲衝突のシミュレーションを実施する。これと並行して,分子雲衝突の過程で形成された大質量星の電離光子が高密度コア形成に与える影響を調べる。電離光子は,特に低質量の高密度コアの破壊に効果的と考えられ,その結果,高密度コアの質量関数に大きな影響を及ぼすと考えられるからである。さらに,磁場が分子雲衝突に及ぼす影響も,系統的に数値シミュレーションを行って調べる。以上の成果を論文として準備し,順次学術誌に投稿して公表していく。
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Causes of Carryover |
残額は3 月末納 品分としてすでに全額執行済みであるが,実績報告上は3月 支払までを対象とす るため,繰越額が発生している
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由なので,使用計画はない
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Research Products
(10 results)