2015 Fiscal Year Research-status Report
銀河進化と元素合成の統合的理解に根差したr過程元素の中性子星合体起源説の全貌解明
Project/Area Number |
15K05033
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
辻本 拓司 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | r過程元素 / 中性子星合体 / 銀河進化 / 元素合成 / 磁気駆動型超新星 / 矮小銀河 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、r過程元素の中性子星合体起源説の全貌解明を、銀河進化の理論考察と観測からの知見に、超新星を含めた元素合成計算結果を融合させ、それを実現することにある。そのために当該年度においては、 高精度の磁気駆動型超新星における元素合成計算を実行し、そしてまた、 矮小銀河の超低金属量星に焦点を充てた高分散のr過程元素組成に関する「すばる観測」も遂行することができた。以上の成果を踏まえることによって、長年の未解決問題であるr過程元素の宇宙初期の起源天体の同定に関し新たな知見を得、r過程元素中性子星合体説の最大の弱点である「r過程元素早期出現の謎」の解明に大きく前進することができた。さらに、矮小銀河のr過程元素の化学組成の銀河初期から形成終焉期に至る進化の全貌に取り組み、r過程元素を駆使した矮小銀河への銀河進化モデル構築の新展開を生み出すことができた。
最も強調すべき成果は、銀河形成早期には、磁気駆動型超新星のような特殊な超新星がr過程元素を優先的に生み出したというシナリオの提示を行うことができたことである。磁気駆動型超新星では星の回転が要となることから、早期の低金属量環境での優先的な出現を予言した。この仮説を、磁気駆動型超新星の元素合成と低金属量星の化学組成との比較検証や、金属量・磁場といった環境の違いによる頻度率の定量的評価を通して、海外共同研究者の一人である西村氏を中心に徹底検証を行い、r過程元素中性子星合体起源説への一部修正を要請するに至ったのである。
さらに、海外共同研究者であるHensler氏、戸次氏とは「銀河進化の枠組みの中でのr過程元素起源」に関して、かなり密度の濃い検討を重ねることができ、今後の研究計画への礎を構築することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最重要課題の一つである「r過程元素早期出現の謎」の解明に大きく前進することができたからである。この成果についてはアストロフィジカルジャーナルレターに投稿を行い、即受理された。さらに、本研究に関連した「すばる観測」をPIで提案し、2期とも採択され、観測を遂行することができたことも挙げられる。その成果の一部については、すでに論文としてまとめ、受理されている。このように、理論と観測の両面において、予想以上の成果を挙げることができた。
これまでの成果を受けて、今年度の秋には本研究計画最終年度の応募を「基盤研究(B)」に行うことを計画している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の残された課題の解明に向けて邁進する。特に、来年度には「基盤研究(B)」への移行(飛躍)を画策中であるため、計画推進のピッチを上げなくてはならない。
焦点を充てるべき一つのテーマが、中性子星合体放出物質の伝搬過程の解明である。合体に伴うejectaがどのように伝搬し最終的に星間ガスと混ざり合うかが、星のr過程組成を決め、銀河のr過程元素の進化パスを決定する。中性子星合体に伴って放出されるejectaの伝搬物理過程は未だ手つかずの領域であり、その解明に着手することは革新的な要素を持ち合わせている。研究代表者らは超新星の場合とは異なり、擾乱磁場に沿って広範囲の星間ガス中に拡散するという仮説を打ち出している。この作業仮説検証のため、擾乱磁場のあるガス中を光速の10-30%で放出されるr過程元素の伝搬過程を解明を解析的手法や数値計算を駆使して臨んでいきたい。
この解明のためには、太陽系形成初期の短寿命核のr過程元素の情報が鍵を担っているのではないかという斬新なアイデアを現在暖めており、その具体的な検討にも同時に着手していく計画である。
|
Causes of Carryover |
海外共同研究者の一人であるHensler氏の渡航費に充てる予定であったが、幸いにも他の資金によってHensler氏を天文台に向かい入れ共同研究を遂行することができたためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の9月上旬に研究代表者がHensler氏の所属するウィーン大学を訪ね共同研究を行うことが予定されており、その渡航費に充てる計画である。
|
Research Products
(9 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Line-depth Ratios in H-band Spectra to Determine Effective Temperatures of G- and K-type Giants and Supergiants2015
Author(s)
Fukue, Kei; Matsunaga, Noriyuki; Yamamoto, Ryo; Kondo, Sohei; Kobayashi, Naoto; Ikeda, Yuji; Hamano, Satoshi; Yasui, Chikako; Arasaki, Takayuki; Tsujimoto, Takuji; Bono, Giuseppe; Inno, Laura
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 812
Pages: 64 (10pp)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-