2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05085
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
瓜生 康史 琉球大学, 理学部, 教授 (40457693)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 相対論・重力(理論) / 重力波 / 相対論的宇宙物理学 / 数値相対論 / 相対論的回転星 / 連星中性子星 / 国際研究者交流 米国:ドイツ / 国際情報交換 米国:ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,高密度天体の平衡・準平衡解計算コードCOCAL(Compact Object CALculator)の開発と,これを用いた高密度天体の研究を行った。まず,Antonios Tsokaros氏(イリノイ大)と協力し,COCALコードで求めた初期データ用いた連星中性子星合体の数値相対論的シミュレーションを行った。これまでに広く利用されてきたLoreneコードによる初期データから開始した数値シミュレーションの結果と比較することで,我々の方法も同様に精度の良い初期データを与えていることを示した。この研究により,COCALコードのデータを世界で最も多く利用されている Einstein Tool Kit (Cactus コード)上で利用できるようになった。 次に,3軸不等の一様回転高密度星の系統的な計算をCOCALコードを用いて行った。現実的な中性子星の状態方程式の性質と考えられる,星の中心付近(inner core)が柔らかく,その外側(outer core)が硬い状態方程式を区分的に近似した状態方程式を用いて,このような高密度回転星の準平衡解を系統的に計算した所,この場合には一様な硬さの状態方程式の場合と異なり,3軸不等の回転星の最大質量が球対称星の最大質量より大幅に増加することを発見した。さらに,この3軸不等の回転星のデータを上で述べた数値相対論的シミュレーションコードに用いて,この様な回転星の力学的安定性を調べている。 この他に,重い星のコアの重力崩壊後にできる原始中性子星や,連星中性子星合体後に生成する超質量中性子星などに見られるより現実的な差動回転則を取り扱えるように,昨年度開発した差動回転星計算コードの拡張を行った。また,磁気流体の保存則とその時間発展法の定式化についても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度もCOCALコードの開発は順調に進展した。特に,COCALコードの初期データを Einstein Tool Kit 上で利用するためのサブルーチンを開発したことにより,今後COCALのデータをより多くの研究者に利用してもらう可能性が広がったと同時に,新たな初期データを計算した際にすぐに数値シミュレーションを行う体制が整った。実際,3軸不等の一様回転高密度星の準平衡解のシミュレーションを,比較的短期間の間に実行することが出来ている。 また,コード開発の進展により様々な平衡・準平衡解を計算できるようになって来ており,これによって新たな物理的な発見も徐々に得られるようになっている。上に述べた3軸不等の一様回転高密度星の計算はこの一例で,このような高密度星の最大質量が状態方程式に依存して,場合よっては球対称星の最大質量を超える,という結果はこれまで見過ごされてきた興味深いものである。 現在,軸対称回転高密度星の差動回転則の一般化に取り組んでいる。新たなアイデアに基づく相対論的な差動回転則の定式化に成功し,コード開発と数値計算を行っている。既に,これまで計算されたことのないタイプの差動回転星の解の計算に成功しており,さらに連星中性子合体直後の複雑な差動回転をする超大質量中性子星のモデル化に取り組んでいる。この研究から更なるコード開発の進展と,物理的に興味深い計算結果が得られることが期待できる。 以上に述べた成果は2本の論文として出版済みであり,3軸不等回転星のシミューレションについてはプレプリントを書き上げた所である。この他に,理論的な研究として,磁気流体の保存則とその時間発展法の定式化についてのプレプリントも書き終えた。これらのことから,本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の前半は,相対論的差動回転則の新たなアイデアに基づく,差動回転高密度星の計算に取り組む。COCALコード上での差動回転星の計算コードは2012年頃に完成していたが,前年度(2016)に系統的な計算を進める中で,回転則を拡張する必要があることが分かった。この拡張を2016年度後半から開始した。連星中性子星合体後の超大質量中性子星は,さらに複雑な回転則(回転軸から外に向けて回転角速度が一度増加してから,概ねケプラー則に従って減少する回転則)に従っていると考えられているが,このような回転則の定式化にも成功した。今の所コード開発が順調に進んでいることから,この研究を継続し出来る限り早めに成果をまとめる。複雑な回転則の計算がうまく行かない場合は,これまでに開発した差動回転星コードによる系統的な計算を先に終えることにする。 2017年度の後半では,磁場を伴う回転星の系統的な計算を行う。強いポロイダル磁場とトロイダル磁場の両方を持つ回転星の計算コード開発は2013~2016年にかけて行って来たが,平衡解の精度がやや足りなかった。このコードは上で述べた回転星のコードと,多くのサブルーチンを共有している。ベースとなる磁場のない場合の回転星のコードの改良も必要だったことが,3軸不等回転星や差動回転星のコード開発を行った理由の一つでもあった。これらの平衡解・準平衡解は満足のいく精度で求まるようになったので,磁場を伴う回転星の平衡解の精度も改良されていることが期待できる。そこで,改めて磁場を伴う回転星の系統的な計算を行う計画である。また,この際に,以前の計算ではトロイダル磁場の強度がポロイダル磁場に比べてやや小さい所までしか計算が出来なかったので,定式化を見直し,トロイダル磁場もトロイダル磁場と同じか,またはそれ以上の強度を持つ解を計算出来るようにすることも試みる。
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Causes of Carryover |
本研究課題では,初年度に高額のワークステーション(189万円)を購入することを計画していたため,平成27年度から29年度までの経費の当初配分において,平成28年度と29年度の経費がやや少なめ(各50万円)に定められていた。初年度に計画通りワークステーションを購入し,未使用額も11万円程度であったので,最終年度に国際学会参加費,海外研究者招聘費,海外共同研究者訪問旅費などの経費を確保するために平成28年度の支出を少なめに抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会参加,海外研究者招聘,海外共同研究者訪問のいずれかに60~70万円程度の利用を見込んでいる。また,COCALコードの開発が進み,数値計算量が増加傾向にあるため,数10TBのデータを保存できるデータサーバーまたはワークステーションを20~40万円程度で購入することを検討している。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Binary neutron star initial data and single, rotating neutron stars as gravitational wave emitters2017
Author(s)
Antonios Tsokaros, Koji Uryu, Luca Baiotti, Filippo Galeazzi, Bruno Mundim, Luciano Rezzolla, Noriyuki Sugiyama, Keisuke Taniguchi, Shin'ichirou Yoshida
Organizer
Americal Physical Society April Meeting 2017
Place of Presentation
Washington DC, USA
Year and Date
2017-01-28 – 2017-01-31