2016 Fiscal Year Research-status Report
ワームホール形成における爆発的粒子生成と超伝導回路を用いたその再現実験の提案
Project/Area Number |
15K05086
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮本 雲平 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (70386621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 一般相対論 / ワームホール / 時間順序保護仮説 / 曲がった時空での場の量子論 / 超伝導回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子論が一般相対論に基づく古典的時空描像を覆す例として、ブラックホールの蒸発やインフレーションによる密度揺らぎの生成がよく知られている。申請者の大きな目標(全体構想)は、ワームホールについて同様のパラダイム:「ワームホール形成は量子論によって禁止されること」を提示することである。本研究は、ワームホール形成の本質を空間のトポロジー変化と捉えることから始める。その上で、トポロジー変化には不安定性(爆発的粒子生成)が伴うこと、それを裏付ける実験方法が存在すること、ワームホール形成を表す具体例で不安定化が起こることを示す。平成28年度においては、ワームホール形成の本質を空間トポロジーの変化として捉え、それを量子場に関する境界の出現・消滅としてモデル化したとき、(1+1)次元平坦時空に於いてスカラー粒子の生成がどのように起こるかを考察した。その結果、境界が出現したときと、消滅したとき、それぞれの場合に対して異なる具合で、爆発的な粒子生成が起こることが示された。ワームホール形成時に同様のことが起こるとすると、これらの結果は、ワームホール形成が量子論的に禁止することを示唆しており、当初申請者等が予想した通りになっていることを表している。一方、壁の出現・消滅の二通りのモデルに対して異なる結果が出ることは、研究の開始当初予想しておらず、新たな研究の方向性を示す非常に興味深い副産物として捉えることができる。これらの成果は4本の出版物に纏められ、また、国外研究会を含む2回の研究会・学会で口頭発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度において、平坦な時空における解析を終わらせ、平成28年度においては、曲がった時空における解析をスタートさせていなければならなかった。しかし、平坦な時空における解析が予想以上に困難を極めたこと、また、曲がった時空における計算に向けて万全な方法論を確立する必要があると判断したため、その点に注力したことが進捗の遅れに影響している。ただし、この遅れは十分に取り戻せるものと判断しており、悲観するべきではないと考えている。また、前述したように、平成28年度に得られた成果には、非常に興味深い新たな研究の種が含まれており、その点でも、多少の遅れには替えられないものが得られたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、平成28年度に得られた壁の出現・消滅に伴う粒子生成の本質について理論的考察を開始したいと考えている。この研究は、当初の計画から多少の変更を伴うが、実験方法を提唱するという本研究課題の性質上、実験方法の提唱の前に、可能な限り現象の原理的な理解をしておくというプロセスは不可欠であると考えられる。また、当初の計画に含まれていた、4次元時空における電磁場に関する考察も開始する。その際、当該分野で見られた最近の進展(L.J. Zhou et al., Physical Review D, 2017)が有用、かつ考慮しなければならない点であると思われる。
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Research Products
(6 results)