2015 Fiscal Year Research-status Report
雷や雷雲での電子加速に由来する陽電子および中性子生成の検証
Project/Area Number |
15K05115
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
土屋 晴文 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (70415230)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 雷雲ガンマ線 / 粒子加速 / 光核反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2006年12月より、柏崎刈羽原子力発電所で雷や雷雲に由来するガンマ線観測を実施している。10年に及ぶ観測の結果、雷雲からガンマ線は数十秒から数分にわたり継続し、雷や雷雲がもつ強電場によって10 MeVを超えて加速された電子が制動放射により放っていることを、申請者らのGROWTH(Gamma-Ray Observations of Winter THUnderclouds)実験が明かしてきた。こうしたガンマ線は、われわれの実験のみならず、衛星や他の地上観測でも観測されており、雷や雷雲が強力な粒子加速器であることが近年、確実になった。一方、雷や雷雲の発生時にガンマ線のみならず、陽電子起源の511 keVのラインガンマ線や中性子が検出されたとする報告があり、それらの起源や発生メカニズムには、まだ不明な点が多く、世界で活発な議論がされている。 本研究では、雷雲中の電子加速に由来して、陽電子や中性子が生成されているのか否かを明確にした上で、雷雲ガンマ線と、陽電子や中性子の生成の関わりを突き止める。これまでのGROWTH実験では、ガンマ線観測を主眼を置いていたため、中性子の検出を探る手段がなかった。そこで本年度、中性子検出器として、低エネルギー中性子に優れた感度を有するLiガラスシンチレータ検出器と高速中性子に感度があるプラスチックシンチレータの2つの検出器を購入した。これらの検出器と、信号波形により中性子とガンマ線を弁別できるデジタイザ(DT5720)を組み込んだシステムを構築した。 柏崎での観測の拡張を進めつつ、柏崎と同じく日本海側に位置する金沢大学近辺に小型の装置を3個展開し、雷雲の中の加速領域の大きさや寿命を明らかにしていく計画を進めた。本年度、金沢大学に設置した装置で雷雲ガンマ線が観測され、今後の装置設計などに対して重要な示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
柏崎刈羽原子力発電所構内に設置してある装置に、今年度に購入し、製作した装置や回路系を組み込む予定であった。しかしながら、設置場所が東電が新たに定めた竜巻強風エリア内に含まれることが判明したため、装置を強風にも耐えられるよう強固に固縛するか、竜巻強風エリア外へ移設するかしなければならなかった。その結果、現状の場所から装置を移設することになり、今年度に新たに装置などを組み込むことはできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
陽電子を起源とする511 keVのラインガンマ線は、申請者らが進めるGROWTH実験において観測した例がある。しかし、どんな条件の際に陽電子起源の511 keVガンマ線が放射されているのか不明である。それを明かすには、放射線観測のみならず雷雲の状態(電場の強度・向き・高度)も測る必要があると推測している。そのため、雷雲の状態を測ることが可能なモニター装置の導入も考慮していく。また、中性子の観測のためには、H27年度に組み上げている装置を用いて、理研などで試験を行い、現地へ展開していく。 以上のような柏崎での観測の強化に加えて、金沢での放射線観測の充実も目指していく。2つの地点での観測により、観測条件の違いによるガンマ線、陽電子、中性子の発生条件のなぞの解明のヒントがあると考えられる。
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Causes of Carryover |
発電所(柏崎刈羽原子力発電所)と相談の上、決定した場所に装置を移設する作業が、来年度(H28年度)にずれ込むことがわかった。装置を移設するには、装置架台を新たに製作したり、追加の旅費がかかることが予測されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度には、装置の移設を実際に行う必要があるため、観測の開始や停止以外にも現地に行くことが多くなる予定である。大半をその旅費に当てる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] On-ground detection of an electron-positron annihilation line from thunderclouds2016
Author(s)
D Umemoto, H. Tsuchiya, T. Enoto, S. Yamada, T. Yuasa, M. Kawaharada, T. Kitaguchi, K. Nakazawa M. Kokubun, H. Kato, M. Okano, T. Tamagawa, K. Makishima
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Journal Title
Phys. Rev. E
Volume: 93
Pages: 021201 1-4
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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