2015 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系の新しい量子臨界現象の微視的理論の構築
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15K05177
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40334346)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホール効果 / ホール伝導度 / 電気伝導度 / 電気抵抗率 / 重い電子系 / 近藤領域 / 価数揺動領域 / ホール係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ce系およびYb系重い電子系における電気伝導度とホール伝導度、それにホール係数の性質を明らかにするため、Ce系およびYb系重い電子系の電子状態を記述する基礎的理論模型である周期アンダーソン模型に基づいて解析を行った。まず、クーロン斥力が無い場合に、任意のエネルギーバンドをもち、軌道間の混成を有する2軌道系における電気伝導度とホール伝導度の一般的な表式を線形応答理論に基づいて導出した。次にf電子間のクーロン斥力がある場合に、フェルミ液体論に基づいて、電気伝導度とホール伝導度、それにホール係数のパラメータ(f準位、f電子と伝導電子の混成強度、電子濃度)依存性を基底状態について計算した。 その結果、価数揺動領域において電気伝導度とホール伝導度の著しい増大が生じることを見出した。その理由は電気伝導度とホール伝導度の表式に表れる、準粒子の減衰率と伝導電子成分の重み因子における、質量増強因子の打ち消しあいが不完全になることにあることを明らかにした。この結果は、従来よく知られていた、近藤領域において電気伝導度とホール伝導度の表式において質量増強因子の打ち消しあいが起こるという概念に、新しい知見をもたらすものであり、圧力下のCe化合物やYb化合物における電気伝導度、すなわち電気抵抗率、およびホール伝導度の振る舞いを理解する上で、理論の礎を与えるものである。 一方、ホール係数においては質量増強因子の打ち消しあいが完全に生じ、フェルミ面が球状(2次元系では円)に近い場合には、全電子数と素電荷の積の逆数でよく表され、フェルミ面が球状でない場合にはフェルミ面の曲率を反映した値をとることを示した。 これらの結果は、準粒子の減衰率が系の特徴的温度である近藤温度の約10%以下の場合に良く成り立つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究により、フェルミ液体論に基づいて、電気伝導度、ホール伝導度、ホール効果の定式化と基底状態におけるこれらの物理量のパラメータ(f準位、f電子と伝導電子の混成強度、電子濃度)依存性を明らかにすることができた。これはCe系およびYb系重い電子系物質の量子輸送現象を理解する上で理論的な礎となる成果であり、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究をふまえて、量子臨界物性の解明のため、ひきつづき理論の構築と整備を行う。さらに、研究の円滑な遂行のため、関連する理論および実験研究者と議論を行うことを目的として、国際会議、および国内研究会への参加を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費の端数のため若干の差額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の物品費と合わせて物品の購入を行う。
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