2016 Fiscal Year Research-status Report
不均一光重合で誘起される液晶/高分子メゾ相分離と自律配向形成の機構解明
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15K05257
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
垣内田 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 構造材料研究部門, 主任研究員 (40343660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 和記 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 構造材料研究部門, 首席研究員 (50358347)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高分子分散液晶 / 液晶高分子 / 光重合誘起相分離 / 配向秩序転移 / 反応性メソゲン / 不均一露光 / 光散乱 / スマートウィンドウ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が提案している「不均一露光による光重合誘起相分離(Photo-PIPS)」の手法は、メゾスケール(ここではサブミクロン~数ミクロンの波長スケールで定義)のドメインサイズで、液晶相と、モノマーより重合された液晶高分子相との二相からなる複合構造を、高い分子配向秩序を維持して形成することができる。この手法を用い、我々は、「リバース型熱応答高分子分散液晶(PDLC)」を開発し、スマートウィンドウなどへの応用を目指している。2016年度では、2015年度に実現した従来タイプと逆の温度依存性で白濁/透明状態を切り換えられる、このリバース型熱応答PDLCを作製する基本技術をさらに発展させ、高温の白濁時の光散乱特性を様々にデザインして素子を作製することに重点的に取り組んだ。とくに光散乱を特徴づける二つの光学特性「ヘイズ」と「エネルギー遮蔽」を切り分けて評価する手法を確立し、この評価法で、エネルギー遮蔽の切り換え性能を高める相分離構造と複屈折率を含む光学特性に関する設計指針を得た。一方、不均一露光下でのPhoto-PIPS進行にともなう分子配向の秩序化の過程を詳細に調べ、リバース型熱応答PDLCの形成機構の解明に取り組み、本素子の作製技術をさらに発展させる鍵となる知見を得た。実際には、透明ガラス基板のラビング処理により、液晶と液晶高分子の混合原料は未照射時に既に高い配向秩序を有しており、光照射しPhoto-PIPSが進んでいっても、その高い配向秩序が維持されているが、ネマティック-等方相転移による配向秩序度の変化はPhoto-PIPSとともに変化していくことがわかった。今後は、光重合度との関係を明らかにし、ミクロスケールで配向・相分離過程の解明に迫る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、光散乱特性と相分離ドメイン構造に着目して研究を進めた。我々が開発を進める「リバース型熱応答PDLC」は、相分離構造を構成する液晶相および液晶高分子相の二相ともに分子配向秩序を形成し、温度変化にともなう液晶相の配向秩序転移で、屈折率のマッチング⇔ミスマッチングが生じ、その結果、低温で透明、高温で白濁の状態に切り換わる。白濁状態では、入射した光が四方に散らされるが、その散乱方向は相分離ドメインサイズおよび屈折率分布の不均一具合により変わることが、本研究でわかってきた。従来のPDLCの白濁状態では、主に入射光の大部分が前方方向に散乱し、ヘイズ(白濁度)は高いがエネルギー遮蔽は低いという特徴を有していた。これに対し、我々は、ドメイン形状を直接観測し、混合原料等の屈折率を測定して、相分離形状および光学物性と、エネルギー遮蔽の制御性との関わりを調べ、エネルギー遮蔽性能を向上が期待される知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
白濁時の光散乱特性を、詳細かつより定量的に調べ、後方散乱を高める相分離構造と光学物性を探る。また、必要に応じて、光学シミュレーションにより、メゾ構造と光伝播特性との関わりを解析し、目指す相分離構造を提示していく。この探索作業は、我々のリバース型熱応答PDLCの白濁状態でエネルギー遮蔽性の向上、ひいてはスマートウィンドウとしての省エネ性能を高めることに繋がる。一方、Photo-PIPSの進行にともなう配向秩序形成の研究をより深めていく。具体的には、モノマーの重合度と配向秩序および相分離の度合いとの関わりを定量化する。これは、PIPSひいてはより一般的な相分離物理の普遍的な基礎知見に繋がる。
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Causes of Carryover |
当初、自作開発を予定していた光散乱ベクトル解析システムについては、カメラを使ったより簡易なシステムで構築を行ったため、費用を削減できた。また、当初は自前で購入し、進める予定だった光学シミュレーションについては、神戸高専の荻原昭文教授のご厚意により行って頂いたため、その余裕が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スマートウィンドウへの実用化において重要となる素子面積の拡大と、当初の計画で予定していたフォトマスクを用いた不均一露光のさらなる展開、また、相分離構造探索の指針を得る上で役立つ光学シミュレーション(FDTD)による研究を進める。費用については、素子面積拡大については、低露光強度と光学系のスケールアップ、フォトマスク露光では異方パターンのマスクを準備して密着露光、光学シミュレーションについては、神戸高専でのより密な意見交換と実作業のための費用に充てる計画である。
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Research Products
(9 results)