2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05450
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
近藤 満 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (80254142)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 配位高分子 / カプセル分子 / 陰イオン捕捉 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビスイミダゾール型の架橋配位子と銅イオンの組合せから生成したカプセル分子が陰イオンを捕捉するメカニズムの解明を目的として、硫酸イオン、過塩素酸イオン、塩化物イオン、ならびに臭化物イオンをその内部に捕捉したカプセル分子を合成し、そのカプセル分子を溶かした溶媒の種類が陰イオンの捕捉選択性に与える影響を明らかにした。特に、カプセル内に過塩素酸イオンを、カプセルの外に硫酸イオンを捕捉したカプセル分子は、アセトニトリルなどの疎水性が高い溶媒中では、カプセル内部に硫酸イオンを優先的に捕捉し、水を添加して親水性を高めた溶媒中では過塩素酸イオンを優先的に捕捉することが分かった。このことから、カプセル内への陰イオンの捕捉選択性はその空間の疎水性が強く影響していることが明らかとなった。 水溶液中において、陰イオンの捕捉を検討した結果は、アセトニトリル-水の混合溶液中ではなく、むしろアセトニトリル中で見られた選択性に近い結果が得られた。これは、カプセル分子は水に不溶であるため、カプセル分子間に形成される空間が疎水的であることに由来することが示された。 陰イオンと同時に陽イオンを捕捉するイオンペア捕捉活性を発現させる金属錯体として、電荷を持たない中性の配位高分子を得るために、カルボン酸を導入したビスイミダゾール型架橋配位子の合成を行った。この架橋配位子を銅イオンと反応させることで、2つのイミダゾール部位が銅イオンを架橋し、さらにカルボン酸サイトがメタルフリーとなって残った配位高分子を得ることに成功した。単結晶構造解析の結果、銅イオンは陰イオンが相互作用し得る空サイトを有しており、カルボン酸は負電荷を残しており、目的とする構造を形成していることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする電荷を持たない配位高分子の合成に成功し、さらに陰イオン捕捉の推進力となる捕捉メカニズムの解明に成功している。研究目的である、水中でのイオンペア捕捉に必要となる、水系でのイオンペアの捕捉がどのようにして進むかを明らかにしている。続いて、カルボン酸を有するビスイミダゾール型架橋配位子を用いて、イオンペアの捕捉に有用な電荷を持たない配位高分子の合成に成功している。特に、単結晶X線解析の結果から、過塩素酸イオンや塩化物イオンなどの陰イオンが相互作用可能なサイトが銅イオン上に残っていること、またナトリウムイオンやリチウムイオンなどの陽イオンが相互作用し得る負電荷サイトとしてメタルフリーのカルボン酸が骨格内に存在することが明らかにされた。これらの相互作用サイトは配位高分子のチャンネル内に組み込まれている。 本研究の目的とする陰イオン捕捉の発現メカニズムの解明に成功している上、イオンペア捕捉に有用な配位高分子の合成と構造決定に成功しており、研究は順調に進展している。 また、電荷をもたない配位分子の合成を検討していた過程で、広い共役系を有するジカルボン酸型架橋配位子と種々の金属イオン(亜鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウムなど)との組合せから、螺旋構造を有するナノチューブ型の錯体が生成することを見いだした。電荷を持たない中性の骨格を有しており、螺旋骨格内部には小分子の捕捉に有用なチャンネルが形成されている。この空間を利用したイオンや小分子の捕捉活性の発現が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
得られた配位高分子によるイオンペア捕捉の選択性を明らかにしていく。生成したカプセル分子が捕捉する陰イオンと陽イオンの選択性を明らかにしていく。配位高分子から得られたカプセル分子への変換が陽イオンや陰イオンの接触により引き起こされているかどうかの確認を行う一方で、金属塩と配位子の直接の反応で得られたカプセル分子と同様の構造が形成されているかどうか、粉末X線回折、およびマススペクトルなどを用いて確認する。最終的に、水に不溶な配位高分子からカプセル分子への変換を利用して、水溶液からの無機塩の効率的な捕捉-除去を実現する。
|