2018 Fiscal Year Annual Research Report
N-H Reductive Elimination on the Well-defined Polynuclear Transition Metal Complexes
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15K05459
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松坂 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50221586)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ルテニウム / N-H還元的脱離 / イミド / ヒドリド / アミド / 2核錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
N-H結合の還元的脱離は、アンモニア合成に代表される、金属サイト上で進行するN-H結合形成反応および逆反応であるN-H結合開裂反応を理解するうえで決定的に重要な素反応過程であるが、均一系有機金属錯体種を用いた研究は極めて限られているのが現状である。本研究では、独自に見出したイミド架橋配位不飽和ルテニウム錯体上でのN-H還元的脱離反応に関する知見を基盤として、多核金属サイト上でのN-H還元的脱離とその逆反応であるN-H酸化的付加を系統的に検討するとともに、速度論解析と理論計算とによりそれらの詳細な反応機構を解明することにより、金属触媒上でのN-H結合形成および開裂に関する実験面からの分子レベルの理解を深化させ、より高活性かつ高選択性を有する新触媒の設計に資することを目的として研究を行った。2核ルテニウムイミドヒドリド錯体 Cp*Ru(mu-NPh)(mu-H)2RuCp* (1; Cp* = eta5-C5Me5) の2核サイト上でN-H還元的脱離が選択的に進行し、アミドジヒドリド錯体 Cp*Ru(mu-NHPh)(mu-H)(eta2,eta2-muC6H5Me)RuCp* (2)が生成することを見出した。生成物の構造をX線解析で同定するとともに、N-H還元的脱離の速度論解析および理論計算を行い、(1)から(2)への変換がN-H還元的脱離を律速段階とする配位不飽和中間体Cp*Ru(mu-NHPh)(mu-H)RuCp* (3)を経由して進行することを明らかにした。上述のN-H結合形成段階の遷移状態に関して得られた知見は、ルテニウム金属触媒上でのNHおよびHユニット同士のカップリング段階の遷移状態に対して提案されている描像ときわめてよく一致しており、均一系有機金属錯体反応場における実験データに基づいて不均一触媒表面でのN-H結合形成過程の理解を深めることに成功した。
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