2015 Fiscal Year Research-status Report
水素結合と折れ曲がり構造を鍵とする新奇蛍光性小分子の創製と機能創発
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15K05468
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
片桐 洋史 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (40447206)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スルホニルアニリン / 蛍光色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
スルホニルアニリン類縁体はアミノ基とスルホニル基の数と位置で多くの類縁体を有する。今年度は、事前の量子化学計算によってより長波長領域での発光が示唆されている多置換分子の合成を検討した。その結果、フルオロアニリンを基質として用いる従来の合成法とは異なり、ジアミノベンゼンから1段階でスルフィド骨格が構築される新規な合成法を見出した。本手法を用いることでこれまで困難であった多置換非対称型分子の合成が可能となった。また、スルホニルアニリン類縁体の構造拡張を検討した。その結果、位置選択的かつ高効率なブロモ化に成功し、得られたブロモ体が鈴木-宮浦カップリング反応において優れた基質であることを見出した。また、本反応によってさらにπ共役を拡張することに成功し、モル吸光係数の向上と極大蛍光波長の長波長化を達成した。さらに、π共役拡張型スルホニルアニリン類縁体は溶液と固体の両状態で発光することが明らかになった。単結晶X線構造解析の結果、これまでに開発した分子と同様にスルホニル基の嵩高い折れ曲がり構造によって分子間相互作用が阻害されていることが明らかになった。続いて、π共役拡張型スルホニルアニリン類縁体に自由回転可能なアミノ基を導入したところ顕著なソルバトクロミズムを示した。アミノ基を持たない分子は全くソルバトクロミズムを示さないことから、アミノ基のねじれによるねじれ型分子内電荷移動TICT (Twisted Intramolecular Charge Transfer)機構が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、「スルホニルアニリン類縁体の合成」と「スルホニルアニリン骨格を基盤とする構造拡張と光学特性チューニング」を達成した。特に、フルオロアニリンを用いない合成ルートを確立することができたことから、今後の分子設計に大きな可能性が見出された。また、π共役拡張の優位性を見出している。以上の結果から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、新しく見出された合成法を用いて多置換スルホニルアニリン類縁体の合成を行う。また、当初計画していた蛍光プローブとしての評価における対象分子に合成済みの新規な化合物群を加える。実験は、市販のDNA を用いてUV-Vis スペクトルによって滴定実験を行い、色素由来のスペクトル変化から、色素の芳香環と核酸塩基の相互作用を調査する。次に、CD スペクトルを用いて滴定実験を行う。また、標的生体分子との結合部位として、マレイミド,およびNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)の導入検討を行う。マレイミドはチオール部位と、NHS はアミノ基とそれぞれ速やかにかつ選択的に結合するため、タンパク質やペプチドの標識が可能となる。
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Research Products
(5 results)