2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05524
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
山下 俊 東京工科大学, 工学部, 教授 (70210416)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲル / 相転移 / 自励振動 / フォトクロミック / アゾベンゼン / ベンゾフェノン / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトクロミック反応により材料の巨視的構造変化を誘起するフォトメカニカル材料はサステイナブル工学を推進する材料として重要である。本研究では従来の光反応による構造変化に加え、増感メカニズムを導入することにより、反応のスイッチを自励的に誘起できる新規材料の開発を目的に研究を行った。 昨年度までに開発したベンゾフェノンとアゾベンゼンを含むアクリルアミドゲル系でのフォトメカ二カル材料の組成を詳細に検討し、増感剤の量を増し、アゾベンゼンの量を減らすことにより最適化を図り応答速度を向上させることに成功した。 次にその光応答性の均一性について検討した。応答の高速化のためには光反応により均一な反応が協奏的に起こり、相変化を誘起することが効果的であるが、ベンゾフェノン系では増感反応は単一の速度定数をもつ均一反応ではなく、複数のモードが存在することが分かった。これは固体中の自由体積の不均一性によるものと考え、増感反応の不均一性の定量化を行った。増感反応の量子収率は従来は分子固有の値であると理解されていたが、本研究では分子の環境毎に異なった量子収率で反応していると考え定量的にその成分を算出した。その結果ベンゾフェノンは固体中では主に3つの反応モードが存在することを見出した。従来、一分子過程での反応は分子固有の量子収率をもつと理解されていたが、環境による影響を含め分子毎に反応性の分布があることを定量化した。この知見はフォトメカニカル材料の高性能化を行う設計をするのに重要なものであり、この知見に基づいて今後さらなる高性能化が図れると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに開発したベンゾフェノン/アゾベンゼン系アクリルアミドゲルでのフォトメカ二カル材料の組成を詳細に検討し、従来よりもアゾベンゼンの割合を減少させることにより応答速度を向上させる組成を見出した。一般にはアクセプターとしてのアゾベンゼンの濃度が高いほうが効率がよいと考えられるが、一方で系の不均一性のため濃度が高いと反応の進行の分布が相転移的な反応性を逆に阻害していると考えた。 応答速度は、化学的組成の最適化と反応環境の両者によって決定される。即ち単に化学的組成を調べるだけではなく、反応環境の設計を含めた巨視的な反応設計が必須となることが分かった。本年度はその知見に着目し、増感反応の不均一性を定量化することに成功した。従来、2成分あるいは3成分の解析は行われていたが、様々な時定数をもつ反応の時定数の分布スペクトルを定量的に得る手法はなかった。本年度はその手法を理論的に開発し、本系における不均一性を定量化することにより効果的な分子設計を提案することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発した増感反応の不均一性の知見に基づいて、反応空間の不均一性の制御を行うことにより、高速応答性をもつ相転移材料の設計を行うというコンセプトでプロジェクトの仕上げを行う。 まず、従来の材料系での組成と応答速度の相関を明らかとし、エネルギー移動速度の均一性(速度または量子収率の分布)を求める。次にゲル合成の際の混合、溶媒、プレポリマーの利用、包接反応の利用などにより系の均一性の構築を探索し、最適条件を検討する。また、アゾベンゼン以外のフォトクロミック化合物の反応を検討する。その反応挙動を評価し、総合的に優れた材料系を完成させる。得られた知見を国際会議にて発表するとともに、デモ用のサンプルを合成しビジュアルにアピールできる環境を構築する。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに予算を執行している。今年度の計画では様々な構造の分子を合成し反応性との相関を探る予定であったが、研究過程で、材料の均一性などの環境が大きな要因であることを見出し、分光分析によりその評価を重点的に行った。そこで合成材料などの購入費が若干余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の知見に基づき、総合的に材料の設計評価を次年度に行う。その一環として材料の構造依存性の検討も行うので、当初予定していた合成材料の費用を次年度にまわし、合成および環境・反応設計を進める。
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Research Products
(3 results)