2017 Fiscal Year Research-status Report
5員環環状カーボナート構造を持つ高イオン伝導性高分子の開発
Project/Area Number |
15K05525
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
松本 幸三 近畿大学, 産業理工学部, 准教授 (90273474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン伝導度 / リチウムイオン / ポリビニルエーテル / カーボナート / 固体電解質 / 高分子電解質 |
Outline of Annual Research Achievements |
5員環カーボナート基を持つポリビニルエーテルに関して、ポリマーの合成法ならびにリチウム塩存在下でのイオン伝導性、熱物性などの諸性質を検討した。 4-ヒドロキシブチルビニルエーテルに水素化ナトリウム存在下でエピクロロヒドリンを作用させることで、エポキシ基を持つブチルビニルエーテルを合成し、さらにリチウム風ブロミド存在下で二酸化炭素を作用させることで5員環カーボナート基を持つビニルエーテルモノマー(CBVE)を合成した。このモノマーをトリフルオロボランエーテル錯体を触媒としてカチオン重合することで目的とするポリビニルエーテル(polyCBVE)を得た。polyCBVEの数平均分子量と重量平均分子量はポリスチレン換算でそれぞれ13,600、28,300と見積もられた。polyCBVEにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を添加し、イオン伝導度を測定した。その結果、LiTFSIをカーボナート基に対して4等量加えた場合に、30℃で10マイクロS/cmの比較的高いイオン伝導度を示すことがわかった。このことから、これまでに検討したポリカルボシラン、ポリシロキサンと同様に柔軟な炭化水素系ポリマーにおいても5員環カーボナートを有するポリマーはLiTFSI高添加量条件では高いイオン伝導性を示すことが明らかとなった。また、polyCBVEのガラス転移温度は-40℃と低く、LiTFSIを添加後も-20℃以下の低い温度が保持されていた。さらに、polyCBVEの5%重量減少温度は211℃で、耐熱性が低いことは実用上の課題であるとわ認識された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、5員環カーボナート基を持つ化学的に安定で柔軟なポリマーとしてポリカルボシラン、ポリシロキサンに加え、新たに炭化水素系のポリビニルエーテルを取りあげ、検討を行った。その結果、目的とする5員環カーボナート基を持つポリビニルエーテルを合成することに成功した。さらに、このポリマーにリチウム塩としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イニド(LiTFSI)を過剰量添加することで比較的高いイオン伝導度を発現することを確認することができた。 この結果は、昨年度および一昨年度に検討したポリシロキサン、ポリカルボシランと比較するとわずかに低いイオン伝導度ではあったが、それでも5員環カーボナート基を持たないポリマーに比べると明らかに高いく、これまでとほぼ同様の結果であると考えられた。ポリビニルエーテルはケイ素原子を含まないいわゆる炭化水素系のポリマーであることから、本研究で見出された高イオン伝導性が5員環カーボナート基を有していれば広く一般の高分子で見られる現象であることが強く示唆される結果となり、研究は順調に進展していると判断された。 今回のポリビニルエーテルの熱安定性が予想よりも低かったことから、熱安定性の向上は今後炭化水素系ポリマーの研究を引き続き進めるうえで改善すべき課題であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、5員環カーボナート基を持つ炭化水素系ポリマーに関して、さらなる高イオン伝導性と実用上十分な化学的安定性と耐熱性を有する新規ポリマーの設計、合成を行い、イオン伝導性をはじめとする諸物性を検討する計画である。そのようなポリマーとして、5員環環状カーボナート基を持つ環状オレフィン、例えばシクロペンテンなどの開環メタセシス重合で得られるポリマーを想定している。市販のシクロペンテンカルボン酸を出発原料とした当該モノマーの合成、ロジウムカルベン錯体等を用いた開環メタセシス重合、生成ポリマーに対して様々な添加量でリチウム塩を添加してのイオン伝導度測定、さらには、ポリマーの化学安定性の検討と熱分解温度の測定を行う。また、リチウム塩添加・無添加状態での結晶の融解温度の測定やガラス転移温度の測定、材料の表面自由エネルギーの測定等を行い、イオン伝導度と諸物性との相関を明らかにする計画である。 最後に4年間の本研究期間で得られた実験結果を統合的、総合的に捉えて、5員環環状カーボナート構造を持つポリマーが示す高イオン伝導性の発現メカニズムの考察を行うとともに、本材料系の高分子固体電解質としての応用の可能性を判断する。
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