2015 Fiscal Year Research-status Report
バイオトランジスタによるタンパク質翻訳後修飾の電気的検出
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15K05530
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
合田 達郎 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (20588347)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオトランジスタ / 翻訳後修飾 / ヒストン / アセチル化 / 水晶発振振動子 / 電荷密度 / タンパク質吸着 / 核酸アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では分子認識にともなう電荷密度変化を直接検出する「バイオトランジスタ」を用いて、生命現象に深く関わるタンパク質の翻訳後修飾を電気的に検出する手法を開発する。分子の電荷密度変化を直接測定することができる電位計測型バイオセンサーを用いて、翻訳後修飾によるタンパク質分子の電荷密度変化をラベルフリーで検出する新たな手法を開発した。バイオトランジスタと水晶発振振動子(QCM)センサーを統合し、「電荷」と「重量」という異なる物理パラメータを同時に検出することによって、遺伝子の転写調節を司るヒストンのアセチル化・メチル化をモデル系として、タンパク質翻訳後修飾の検出をおこなった。ヒストンのアセチル化はリジン残基の正電荷を奪い、DNAの転写を促す役割を担っており、転写異常は細胞のがん化と密接に関連している。 まず、精製ヒストンプロとマーとアセチル化試薬(Sulfo-NHS)を用いてアセチル化度の異なるヒストンを作製した。次に、半導体バイオセンサーによる電位測定により、界面電位変化から吸着したヒストンにともなう界面電荷密度変化ΔQを求めた。水晶発振振動子(QCM)法により得られるヒストン吸着量を用いてヒストンの電荷/重量比を求め、質量分析あるいは蛍光ラベル測定から得られたヒストンのアセチル化度との比較をおこなった。 その結果、ラベルフリー測定で求めた単位分子当たりの電荷密度がヒストンのアセチル化度に依存することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はヒストンのアセチル化度をモデルサンプルにおいて求めることには成功したが、実サンプルを用いた測定に手間取っている。その結果、当初予定のヒストンメチル化の実験には未着手である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンのアセチル化に関する実験を実サンプルを用いておこなう。ヒストンのアセチル化を担うHATの阻害剤や、ヒストンディアセチラーゼ(HDAC)阻害剤をヒト株化細胞に作用させ、アセチル化の異なるヒストンを細胞から抽出・回収する。HAT阻害剤としては、Anacardic acidやCurcuminを検討しており、HDAC阻害剤としては、ApicidinやTrichostatin Aを用いる予定である。上記の方法によって、ヒストンの電荷/重量比を求め、実サンプルにおけるヒストンのアセチル化度を評価する。 当初予定のヒストンメチル化の実験に取り組む。ヒストンのメチル化は電荷の変化をともなわない(-NH3-n+-Men、n=1-3)。そこで、メチル化のおこなわれていないリジン残基については化学的に電荷をラベルする手法を採用する。これは、以前、タンパク質の高感度電荷検出法として開発された手法であり(Goda, Anal. Chem. 2010, 82, 8946)、未修飾のリジン残基について選択的に負電荷へと電荷を変換する電荷ラベリング法である。アセチル化の実験と同様に、既存の方法との比較をおこない、メチル化度の定量的な検出をおこなう。 アルツハイマー病のバイオマーカーであるリン酸化タウタンパク質の評価に関するモデル実験をおこなう。トレオニン181、セリン199、セリン202、トレオニン205等のリン酸化によってタンパク質に付与された負電荷を直接検出することを試みる。チューブリンやアプタマー(Krylov, FEBS Lett, 2005, 579, 1371; Kumar, BioNanoSci, 2012, 2, 83)などタウタンパク質と特異的に結合するリガンドを電極に修飾し、高感度測定をおこなう。
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Causes of Carryover |
実験計画が遅れたことにより、物品購入費と旅費に関して主に繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実サンプルを用いた実験や、ヒストンメチル化に関する実験を今年度に実施すること関して予算を使用する予定である。また、研究成果の外部発表に関しても予算の繰り越し分を使用する予定である。
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