2017 Fiscal Year Research-status Report
構造色変化に基づく生体分子のウェアラブルセンサーの開発
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15K05534
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
菅野 憲 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (60466795)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオセンサー / ウェアラブルセンサー / 逆オパール構造高分子ゲル / 構造色変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
逆オパール構造(IOS)高分子ゲルの構造色変化に基づくウェアラブルなステロイドホルモンセンサーを開発する。具体的には,アクリルアミド系モノマーにステロイドホルモンとその受容体タンパク質を化学的に結合させる。これらの化学修飾モノマーを重合させ,受容体-リガンドが架橋点となるIOS高分子ゲルを作製する。この高分子ゲルが試料中のステロイドホルモンを認識すると,競争的にゲル中の受容体と架橋点を形成し,ゲルは膨潤する。この高分子ゲルの膨張による構造色変化を指標としたステロイドホルモンセンサーを開発する。開発したステロイドホルモンセンサーを生きたマウス個体の皮下に埋め込み,照射した近赤外光の吸光度変化を指標として,生体内のステロイドホルモンを連続的にリアルタイム検出できることを実証する。本研究では,実施例として,ステロイドホルモンである女性ホルモン(エストロゲン)および黄体ホルモン(プロゲステロン)を標的とした高分子ゲルセンサーの開発に取り組むが,それらの設計概念は,標的分子を生体分子一般に拡張することが可能である。 平成29年度は,組換えタンパク質を導入したIOS構造を有する高分子ゲルの調製法の検討に取り組んだ。組換えエストロゲン受容体(ER)を導入したIOS高分子ゲルをエストロゲンの1つである17β-エストラジオール(E2)で刺激した後に反射スペクトルを取得したところ,約550 nm付近に観察された反射光強度の極大ピークが短波長側に数 nmシフトした。これは,E2依存的にERが2量体を形成することでIOS高分子ゲルが収縮し,格子間隔が狭まったことで構造色が変化したためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成29年度は組換えタンパク質を導入したIOS構造を有する高分子ゲルの調製法の検討に取り組んだ。 IOS高分子ゲルを得るための鋳型を作製して反射スペクトルを取得したところ,約550 nm付近に反射光強度の極大が観察された。一方,遺伝子光学的手法により,ステロイドホルモン受容体の合成にも取り組んだ。 IOSを有する高分子の簡便な合成法は,(1)粒径のそろったポリスチレンビーズを用い,最密充填型コロイド結晶を調製する,(2)結晶間隙に高分子のモノマー溶液を浸透させて重合させる,の2段階により実施した。同一素材であれば細孔の径がIOS高分子の構造色決定に重要であることが知られている。直径230 nm程度のビーズを鋳型に用い,生体組織を透過しやすい近赤外領域の範囲内で構造色が変化するIOSゲルの調製法の確立に取り組んだ。IOS高分子ゲルを得るための鋳型を作製して反射スペクトルを取得したところ,約550 nm付近に反射光強度の極大が観察された。 一方,遺伝子光学的手法により,ステロイドホルモン受容体である組換えエストロゲン受容体(ER)を合成・精製し,N-(アクリロイルオキシ)スクシンイミドで修飾した後,IOS高分子ゲルに導入した。エストロゲンの1つである17β-エストラジオール(E2)で刺激した後に反射スペクトルを取得したところ,約550 nm付近に観察された反射光強度の極大ピークが短波長側に数 nmシフトした。これは,E2依存的にERが2量体を形成することでIOS高分子ゲルが収縮し,格子間隔が狭まったことで構造色が変化したためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,前年度までに調製したIOS高分子ゲルが,試料中のステロイドホルモン濃度を長期間連続的にin vitro/in vivo半定量解析できるかを検証する。一方,カーボンブラックを用いれば角度依存性のない構造色を呈する高分子ゲルの調製が可能であるという報告がある。この報告に基づき,E2濃度に応じた角度依存性のない構造色を呈する高分子ゲルの調製にも取り組む。
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Causes of Carryover |
平成29年度は,北陸豪雪の影響で研究および物品等の納入が遅れ,消耗品の購入に計上して費用を使用することが困難であった。
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