2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K05563
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 勇太 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点助教 (60580115)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光誘起電荷分離分子 / フラーレン / ポルフィリン / 金属内包フラーレン / スーパーオキシド / ミトコンドリア / 光線療法 / 光酸化還元反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、昨年度から合成・開発している分子系のうち(a)両親媒性フェロセンーポルフィリンーフラーレン連結型分子と(b)メシチル-アクリジニウム骨格を有する分子についてそれぞれ、株化細胞を用いた実験を行い細胞内動態と光照射時の分子機能性についての評価を主に行った。 具体的に、上記(a)(b)の光電荷分離する分子をHeLa細胞にそれぞれ導入し、ミトコンドリアへの送達効率の評価と細胞応答の観測を行った。(a)ポルフィリン-フラーレン連結型分子をベースにした系においては、単独では細胞小器官への選択的な到達は見られなかったが、薬物送達キャリアとの複合化により75%以上の共局在係数にてミトコンドリア局在を示した。そして、光電荷分離状態の還元能を利用することでミトコンドリア内で酸素分子への光誘起還元反応を引き起こし、スーパーオキシドを発生させることに成功した。(b)の分子系では、分子単独でミトコンドリア到達が可能であることを明らかとし、光電荷分離状態における分子の高い酸化能を利用することでミトコンドリア内脂質の選択的酸化と、これをきっかけとする細胞シグナリングによる細胞死の誘導に成功した。以上のように、光電荷分離を利用することで、細胞内小器官のミトコンドリアにて光誘起の還元反応あるいは酸化反応を引き起こす分子開発に成功した。 また一方、これら分子系のビルディングブロックとしてユニークな電子的・磁気的性質を示すと期待される金属内包フラーレンについても分子機能化の検討を行った。そして磁気異方性を示すセリウム内包フラーレンに化学修飾を施すことで、周辺原子や分子の位置を同定する分子レーダーとしての利用可能性を提示することに成功した。本成果はJACS誌に論文掲載された。将来的にこの分子特性を細胞内で利用することで、細胞内在分子の構造や状態を把握する分子レーダーとして働くことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も当初計画通り、昨年度から開発を行っている分子プロトタイプを完成させ、これらを用いた本年度の細胞実験によって「光電荷分離分子が細胞小器官機能に与える効果の解明」を主に行い、上述の通り一定の成果を得た。これらの成果は間もなく学術論文として発表する予定であり、研究はおおむね順調に進展してる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初計画通り、これまでに得られた実験結果を基に開発分子系をブラッシュアップすることで、細胞における光応答に関する分子性能向上と原理解明を進める。これにより本研究の完成と目標達成を行う。 この際に、将来的に極限の効率で光エネルギーを利用して細胞機能制御できる分子を臨床応用することを目標に、現在よりも高効率・高汎用性を持った上でin vivo利用も可能とする分子開発の指針を得るべく分子デザイン検討・合成開発を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は、所属機関より当初予定していなかった助成金が得られたため、結果として本科研費の支出額を抑えられた。これにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、各種細胞実験などにおいて当初計画の支出を行うとともに、これまで得られた研究データを基にした研究発展のための新実験も立案・実施することで次年度使用額を含めた本科研費を使用する計画である。
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Research Products
(4 results)