2016 Fiscal Year Research-status Report
抗ウイルス性硫酸化糖鎖の生理活性作用メカニズムの解明
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15K05617
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 孝 北見工業大学, 工学部, 教授 (40166955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 秀喜 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20192669)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 長鎖アルキル鎖 / 相互作用 / リポソーム / SPR / 粒子径 / ゼータ(ζ)電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然糖鎖は種々の認識や生理活性に係っているが、複雑な構造を持つため構造と生理活性との関係を調べることは難しい。これまで無水糖類の開環重合法によって構造明確な立体規則性糖鎖を合成し、構造と生理活性との関係を解明する研究に取り組んできた。オリゴ糖鎖に長鎖アルキル鎖を導入した硫酸化オリゴ糖鎖は高い抗HIV性を示すことを報告した。一方、3-O-オクタデシル-(1→6)-alpha-D-グルコピラナンの合成は報告されているが、抗ウイルス性などの生理活性は調べられていない。長鎖アルキル鎖の役割は細胞膜との相互作用と推測されている。そこで、3位に長鎖アルキル鎖を導入した硫酸化糖鎖を開環重合によって合成し、長鎖アルキル鎖と細胞のモデル化合物としてリポソームとの相互作用をSPR、粒子径、ゼータ(ζ)電位測定によって調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
50および100nmのリポソームとの相互作用を調べ、粒子径はデキストラン硫酸では変化しなかったが、オクタデシル硫酸化グルコピラナンではそれぞれ104および267nmとなった。ゼータ(ζ)電位(リポソーム0.12および0.07mV)はデキストラン硫酸では-10.4および-8.64mVであるのに対し、オクタデシル硫酸化グルコピラナンでは-33.46および-34.86mVと大きく変化した。さらにリポソームを固定化したセンサーチップを用いてSPRを測定したところ、デキストラン硫酸では相互作用を示さなかったが、オクタデシル硫酸化グルコピラナンでは、ka=5.72x105 1/Ms, kd=4.47x10-4 1/s, KD=7.82x10-10 Mとなった。粒子径、ゼータ(ζ)電位測定、およびSPRの結果からオクタデシルグル硫酸化グルコピラナンはリポソームと強く相互作用を示すことが明らかになり、リポソームの二重膜にオクタデシル基が侵入(入込み)した結果と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究により、長鎖アルキル鎖を持つ硫酸化糖鎖の高い抗HIV性は細胞の脂質二重膜にオクタデシル基が侵入および(+)と(-)の静電的相互作用によってウイルス表面に硫酸化糖鎖やオリゴ糖鎖が強く固定化されHIVの感染力を弱めたと考えた。今後はさらに抗HIV性メカニズムを詳細に検討し、抗ウイルス材料化を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度に62,393円の使用残が生じた。主な要因として謝金等の支出が無かったことによるものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、28年度の使用残は試薬等の消耗品(物品費)の購入に充てる。
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