2016 Fiscal Year Research-status Report
ラプラス圧による繊維中のナノ孔の圧壊とその孔径制御
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15K05624
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
武野 明義 岐阜大学, 工学部, 教授 (70227049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 紳矢 岐阜大学, 工学部, 助教 (40377700)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラプラス圧 / クレーズ / メソポーラス / 薬剤固定 / 繊維 / フィルム / アスタキサンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目的は次の2点である。 1.ラプラス圧によるボイドの縮小機構を解明する。 2.クレーズのボイドに薬剤を導入する。 初年度の結果を参考に、各温度における熱収縮を測定し、見かけの活性化エネルギーを算出した。同時に静的光散乱測定により、相間長を求め、同じくラプラス圧によるボイド収縮を評価した。これらの結果と光学顕微鏡によるクレーズ相の消失、SEMによるボイド径の評価や気体透過性の結果を合わせて、径の制御および縮小プロセスを検討した。ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびポリプロピレンといった非晶性と結晶性の違いや、ガラス転移温度の違いによらず、ほぼ60℃付近に転移点があることが分かった。これは、クレーズ相の収縮が残留応力による熱緩和ではないことを示唆している。断面SEMの結果から推定したボイド径分布から発生するラプラス圧を見積もった。すると、高分子の降伏応力より若干低めの値となった。このボイド径が10nm付近に達した場合に、相対的に表面積が増すため、表面分子の運動性の高さに起因する低ガラス転移表面の寄与が大きくなり、バルクの弾性率より低くなっていると考えられる。その結果、バルクの性質との乖離が起こり、容易にラプラス圧によるボイドの収縮が起こる。 次に、薬剤の浸透についても検討した。まず、目的分子を浸透させる。このままでは、洗浄により溶出してしまうため、クレーズ相のボイドを収縮させ、ボイド径を縮小し溶出を防ぐ。コーティングに比べ高い耐久性が期待できる。そこで、実用性も考えアスタキサンチンの含浸を試みた。これは、抗酸化剤として化粧品やサプリメントとして期待されている素材である。その結果、フィルムおよび繊維状にしたクレーズを持つポリプロピレンに含浸固定することができた。これについては、企業からも注目され実用化の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は予想以上に進捗している。当初の研究予定に加え、リチウムイオン電池セパレータとしての応用に新たな展開が見られた。ラプラス圧によるボイド径の制御を利用して、リチウムイオン電池の熱暴走時の自己停止に利用することができる。特に今年度は、ラプラス圧による収縮効果を維持したまま、透過性を高めることが可能であることが分かった。現在特許を申請中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、ラプラス圧によるボイド径の変化を制御し、薬剤の担持を試みる。しかし、リチウムイオン電池セパレータに関する応用に良い結果が得られている。そこで、ラプラス圧による孔径制御と新たに曲路率のキーワードを加え検討したい。曲路率は、ボイド間の連結により形成される気体や液体の透過経路の直線性を示し、この値が小さいほど、同じ気孔率であっても透過性が高くなる。クレーズ相による多孔フィルムでは、この点に優位性がありそうである。
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Causes of Carryover |
多孔化装置の消耗部品交換を次年度に持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
多孔化装置の分品交換を行う。
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