2015 Fiscal Year Research-status Report
備前焼「金・銀彩」模様の形成機構の解明とそれらの再現法の確立
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15K05656
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
草野 圭弘 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (40279039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 実 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20150815)
高田 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60093259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セラミックス / 備前焼 / 酸化鉄 / 微構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
備前焼作家である連携研究者から提供された「銀彩」備前焼について、構成相および微構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により検討した。これまで、陶磁器表面の金属光沢模様は、焼成時に付着した炭素膜による干渉色と考えられてきたが、提供された銀彩模様の断面および酸処理により取り出した結晶相についてTEM観察を行った結果、炭素の存在は確認できなかった。しかし、酸化鉄が試料表面に生成していることを見出した。電子線回折の結果、この酸化鉄は備前焼を代表する特徴的な赤色模様のヘマタイト(α-Fe2O3)ではなく、近年次世代の磁性材料として注目されている、Fe2O3の多形であるε-Fe2O3であることを見出した。また、酸化鉄粒子以外に、アルミニウムおよびマグネシウムを含む粒子が生成していることがわかった。 作家による金・銀彩備前焼の作製条件について調査した結果、成形した備前焼粘土と稲わらを酸化雰囲気下で昇温した後、木材や炭による還元雰囲気下で冷却すると作品表面に金属光沢が現れる確率が高くなり、酸素分圧により色調が変化することがわかった。これらの調査結果を基に電気炉による再現実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画通り、おおむね順調に進展している。連携研究者から提供された銀彩備前焼について、発色構成相が炭素膜でなく酸化鉄であり、イプシロン型酸化鉄(ε-Fe2O3)であることを明らかにすることができた。 備前焼作家である連携研究者の焼成条件を調査した結果、備前焼表面が金や銀色などの金属光沢に呈色しやすい焼成条件が明らかになった。 以上の結果を基に、現在電気炉による再現実験を開始しており、平成27年度は概ね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き、備前焼作家から提供された金・銀彩備前焼の呈色構成相および微構造を解明する。また、昨年度の調査結果を基に再現実験を行う。酸素分圧を制御することが可能な電気炉にて、金彩・銀彩備前焼の再現を試みる。 上記で得られた試料について、粉末X線回折による生成相を同定し、電子顕微鏡観察により呈色構成相の組成および微構造を明らかにし、分光測色計により試料表面の色調をデジタル化する。更に、電気炉にて作製した金・銀彩備前焼と備前焼作家が登り窯で作製した備前焼を比較検討し、相違点を明確にして模様の再現実験にフィードバックする。
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Causes of Carryover |
論文校閲費用の支出を予定していたが、論文の完成が遅れ次年度に投稿することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試料作製に必要な粘土、試薬、高純度ガスなどの消耗品費、得られた試料の微構造観察を行うための電子顕微鏡などの機器使用料、得られた結果を公表するための、論文校閲・印刷費および学会参加費および旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)