2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05727
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
關谷 克彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80226662)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 凝着 / 構成刃先 / 切削加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,切削加工における凝着物生成メカニズムを明らかにすることを目的としている.断続旋削加工により被削材から工具が一時的に離脱する時間を設けることにより,工具刃先に付着した凝着物の観察と切りくず端部(工具が被削材から離脱する直前に生成さされた部分)の観察を行うことにより,凝着物の大きさ・形状を評価した. 初年度である本年は,オーステナイト系ステンレス鋼を様々な工具を用いて断続旋削し,切りくず端部の観察およびこの部分の断面観察を行うことにより凝着物の大きさ・形状を評価した.オーステナイト系ステンレス鋼を旋削した場合,凝着物の生成と仕上げ面断面形状の乱れとの相関が必ずしも認められないことが判明した.切削時に行ったビデオ撮影から工具に付着した切りくずもしくは凝着物が工具の被削材への再突入時に脱落しない場合に仕上げ面断面形状が大きく過切削され,このことにより断面形状が乱れることが判明した.切りくず端部の観察と端部断面観察から凝着物は切りくず幅方向に一様に分布することなく,場合によっては横切刃切込み境界部の方が大きな凝着物となることが観察された.切削速度が上昇し,仕上げ面断面形状に与える凝着物の影響が小さくなるのは,前切刃周辺の凝着物が小さくなることによるものであり,このような場合においてさえ主要切削部である横切刃には凝着物が観察された.これらの事実は従来切削加工関連の多くの研究者や技術者が抱いていた凝着に対するイメージとは異なっている.構成刃先を工具切刃に代わり被削材を過切削するものと定義すれば,構成刃先の生成と仕上げ面とは強い相関があるとは言えず,オーステナイト系ステンレス鋼の旋削においては,切削速度の上昇は構成刃先の縮小化を促すが,完全な消失をもたらすものではないことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では切りくず端部の断面観察を行ったが,これには採取した切りくずの樹脂埋めおよびこのようにして作成した観察試料を研磨機によって研磨する必要がある.本研究では切りくず幅方向の凝着物(構成刃先)形状や大きさを把握することを実施内容としてるため,観察断面が切りくず幅方向のどの位置にあるか同定する必要があるため,切り屑が観察面と垂直になるように埋めこまなければならず,煩雑な作業を伴うために時間を要してしまった. さらに,凝着物と切りくずの区別を行うためには研磨断面に対して腐食処理しなければならず,腐食処理と断面研磨の繰り返しに時間を要したため,やや研究の進行が遅れてしまった.しかしながら,比較的腐食速度の遅い腐食を行うと,工具切刃付近の材料変形の様子がかえって観察し易いものとなり,副次的な効果が得られた.今後は研究の進行度合いと観察対象に合わせて,複数の腐食条件で観察を行うことを考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で,提案した実験手法によって企図した観察が行えることが確認できた反面,樹脂埋め時の切りくず保持方法に問題点が見つかり,当初予定していた実験が当該年度に完了しなかった.本年度は,切りくず保持が容易に行えるような対策を考えつつ,実験の遅れ(切りくず端部断面観察)を取戻し,当初から予定していた凝着が激しいとされるニッケル基超耐熱合金について凝着物の形状・大きさを評価する.加えて,オーステナイト系ステンレス鋼の切削について補足実験を行う予定である. また,初年度に得られた結果を学会等で公表し,論文投稿を行うことを計画している.
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