2015 Fiscal Year Research-status Report
潮流発電のポイント選定を見据えたフィルタ理論FEMによる高精度流況推定技術の解明
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15K05786
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
倉橋 貴彦 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00467945)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シミュレーション工学 / 自然現象観測・予測 / 海洋工学 / 計算物理 / 数理工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度では,観測値を用いた流れ場推定解析に対する準備として,波動水槽における水位の経時変化データの取得と,カルマンフィルタ理論および有限要素法に基づく流れ場の推定プログラムの検証を行った.実験では,全長20m程度の波動水槽に水深0.46mの水を用意し,波の伝播実験および3箇所における水位の経時変化の定点観測を行った.2箇所の水位データを用いて流れ場の推定解析を行い,残りの1箇所の水位の経時変化と,流れ場の推定解析結果を比較すると,傾向は捉えられているものの,計測値と解析値の間には差がある結果となった.また,本検討では流速ベクトルの向きは流れの伝播方向を適切に表せていることは確認できた.次に,観測点の設定の位置や,観測変数の数(平面x,y方向の流速,水位変動量)に関する考察のため,数値実験を行った.観測変数の数については,「平面x,y方向の流速,水位変動量」を観測値とした場合は,「水位変動量のみ」を観測値とした場合に比べて,精度の良い結果を得ることが多かった(計測点の設置位置によっては,観測変数が多くても精度の良い結果とならなかった例もあった.).また,観測点の配置を,波の伝播の上流側から流路中央点まで計測点を設置した場合と,流路中央点から下流側まで計測点を設置した場合について比較を行ったところ,流れの下流側のみに計測点を設置した場合は,上流側の水位を適切に表せないことがわかった.学会活動としては,日本応用数理学会2015年度年会にて研究成果を報告し,研究の進捗の結果を,長岡工業高等専門学校紀要(Vol.51,pp.1-9, 2015)へ投稿し,また,現状の結果については,日本機械学会論文集(第82巻,第835号 pp.1-19, 2016)へ投稿し受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで,波動水槽において水位変動量の径時変化を計測するための準備を行い,水位の履歴を計測することができた.また,カルマンフィルタFEMによる浅水域における流れ場の推定を行うプログラムを構築し,矩形水路を用いた数値実験および実験による計測データを使用した検証を行った.流れ場の支配方程式としては,線形の浅水長波方程式を用い,離散化手法としては,空間方向に対しては,三角形一次要素(同次補間)を用いたガラーキン法,時間方向に対しては,セレクティブ・ランピング法を適用した.観測変数の数,観測点の数・配置位置を変えた検討を行ったところ,流れの下流側のみに計測点を配置すると,上流側の流れ場の推定が困難になることがわかった.観測点間の状態量(流速・水位変動量)は,有限要素法による補間により適切に補間されるが,境界条件を考慮した流れ場の推定解析を行わないと,観測点に囲まれた領域以外は推定が困難なものとなる.この問題点を解決するために,現在,ベルマンの原理に基づく評価関数を最小にするように境界条件を設定する方法について,学習し検討を行うことを考えている.また,二次元領域における流れ場の推定プログラムは完成しているが,今後,任意の境界形状の問題へ拡張が可能なように,陸岸境界におけるslip境界条件を入れる必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
浅水域の流れ場の推定解析において,高精度に推定された流れ場を求めるためには,離散化手法も重要であるが,流れの入射する境界近傍における観測点の配置が極めて重要であることを確認できた.離散化による状態変数の補間は,観測点が適切に配置されれば,観測点間の水位や流速の分布を適切に表すことはできるが,流れの下流側のみに観測点を配置し,カルマンフィルタFEMによる流れ場の推定を行うと,上流側の流れ場の推定が困難なものとなる.そのため,境界条件も計測点の計測値から逆推定し,合わせてカルマンフィルタFEMにより流れ場の推定を行う方法について考える.現在の方策としては,ベルマンの原理に基づく評価関数を導入し,動的計画法により境界条件を表す式を誘導することで,流れ場の下流側のみに計測点がある場合においても,流れの上流側を適切に推定できるものと考えている.カルマンフィルタFEMに境界条件を推定するプログラムを組み込む必要があるため,この点が今後の課題となる.また,研究の進捗に応じて,任意の境界形状の問題へと拡張が可能なように,陸岸境界におけるslip境界条件を入れたプログラムへの拡張を考えている.
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Causes of Carryover |
長岡工業高等専門学校の造波水槽を借用させて頂いているため,H27年度は当初予定の研究経費の使用を抑えた形で,研究を実施した.水位計等,研究遂行上の必要物品は適宜購入する予定である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は,継続して行うカルマンフィルタFEMに基づく流れ場の推定解析のためのスーパーコンピュータのレンタル,また造波水槽を用いた実験等に費用を充てることを考えている.また,2016年6月5日~10日にギリシャにおいて開催される計算力学関連の国際会議「ECCOMAS Congress 2016」に参加し,研究成果の発表を予定している.国際会議においては,Organized sessionとして,"MS 1301 - The Stochastic Computer Methods in Mechanics"というセッションをポーランドのMarcin Kaminski教授と立ち上げ,セッション内では発表を予定している.現在,日本機械学会論文集に投稿が受理されたため,論文の掲載料に対しても研究費を充てる予定である.研究成果に応じて,計算力学講演会等においても発表をする予定である.
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