2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロチャンネルにおける化学発光を用いた局所物質伝達率の定量評価
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15K05846
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
松本 亮介 関西大学, システム理工学部, 教授 (50268314)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 化学発光 / マイクロチャンネル / ルミノール反応 / 物質伝達率 / 固定化触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロチャンネル壁面での触媒反応による化学発光強度から,化学種の局所の質量流束を評価し,物質伝達率を定量測定することを目標とする. 平成27年度は(1)マイクロチャンネル壁面での化学発光のための適切な触媒の選択と保持方法の確立,そして(2)化学発光強度から化学反応量の評価方法の確立を試みた.しかしながら,平成27年度には,項目(2)については達成したものの,(1)の触媒の選択については,微小銅球を触媒として用いたため,銅球表面での化学発光強度は極めて微弱であり,定量評価には至らず,平成28年度への持ち越しとなった. そこで,平成28年度は,(1)マイクロチャンネル壁面での化学発光のための触媒の選定と保持方法の確立,および当初の計画の(3)マイクロチャンネルでの物質伝達率の評価,(4)数値シミュレーションとの比較を実施した. 触媒については,触媒となる金属錯体を担体結合させた固定化触媒(YBa2Cu3O7)を選定した.固定化触媒を用いることで担体に触媒が保持され,溶液中に溶解せず,20-30μmの粒子状の固定化触媒の表面において化学反応が起こる.マイクロチャンネル内に固定化触媒を保持させて,ルミノールおよび過酸化水素の混合溶液を流入させることで,固定化触媒表面において化学発光の観察に成功した.別途測定した反応速度定数を用いて,化学発光の輝度値からマイクロチャンネルでの化学反応量の評価を行うことができ,項目(1),(3)について達成することができた.また,(4)の数値シミュレーションによる濃度分布との比較を行うことで,化学発光輝度は物質伝達の影響を受け,変化していることが判明し,項目(4)についても達成することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,(1)マイクロチャンネル壁面での化学発光のための適切な触媒の選択と保持方法の確立の項目について達成できなかったものの,平成28年度において,固定化触媒を利用することでマイクロチャンネル壁面において化学発光を観察することができ,また,その化学発光輝度値からマイクロチャンネルでの化学反応量の評価を行うことができ,初年度の遅れを取り戻すことができた.また,併せて,当初の予定の(3)マイクロチャンネルでの物質伝達率の評価,(4)数値シミュレーションとの比較についても,達成することができている.以上より,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現状では,粒子直径が20-30μmの固定化触媒は,マイクロチャンネル上に分散して保持されている.そのため,マイクロチャンネル壁面全体の物質伝達率の計測には至っていない. 平成29年度には,固定化触媒のマイクロチャンネル内での保持方法について,再度検討し,マイクロチャンネル壁面での物質伝達率の評価を行う.そうして,当初の計画である(5)マイクロチャンネルの物質伝達率の相関式の提案を達成する. さらに,ストレートのマイクロチャンネルだけでなく,(6)マイクロリアクターを模擬した90°の曲がり部での物質伝達率の評価も併せて実施する.
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究計画であった触媒の選定について,平成28年度には固定化触媒を用いることで研究が順調に進み,マイクロチャンネルチップおよび固定化触媒の消耗が想定よりも少ない状態で実験を行うことができた.そのため,マイクロチャンネルチップおよび固定化触媒の購入が想定よりも少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の計画では,90°曲がり部での物質伝達率の評価のため,新たなマイクロチャンネルチップを購入する.さらに,マイクロチャンネル全面に固定化触媒を散布し,チャンネル全体での物質伝達率を評価する予定である. マイクロチャンネルチップ(物品費),固定化触媒(物品費),学会発表のための旅費(PSFVIP-11,熊本大学)の使用計画である.
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