2015 Fiscal Year Research-status Report
シンバル音に及ぼす局部的塑性加工の影響解明と平板振動放射音の適音化への応用
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15K05860
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
鞍谷 文保 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00294265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 達哉 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20734544)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 振動工学 / モード解析 / 放射音 / シンバル / 局部的塑性加工 / 応力分布 / 実稼働変形 / 音響放射効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,局部的塑性加工(ハンマリング加工)によるシンバルの調音において重要となる,音響放射効率の高い振動モード形状の明確化と局部的塑性加工による振動・放射音の変化予測法の開発を目的とした. ・音響放射効率の高い振動モード形状の明確化 シンバル音の基はシンバルの振動である.そこで,シンバル音に寄与の高い振動モード形状を調べ,局部的塑性加工で振動特性を変化させるべき重要な振動モードを明確にした.その結果,節直径数0から2のモードでは節円数の増加とともに音響放射効率が高くなる.一方,節直径数が3以上のモードではそのような傾向が見られず,節直径数が多いと放射効率が低くなる傾向にあることが明らかになった. ・局部的塑性加工による振動・放射音の変化予測法 シンバル調音の条件決定法を検討するために,局部的塑性加工による振動・放射音の変化予測法を開発した.計算負荷を低減するために,塑性加工による残留応力を熱応力解析で求める方法を採用した.開発した変化予測法を用いて,加工条件(個数,強さ)と応力分布,振動・放射音特性の関係を調べた.その結果,以下のことが明らかになった.局部的塑性加工の間隔すなわち個数によりシンバルに生じる応力分布(引張・圧縮応力の分布)形状が異なる.塑性加工の強さに関しては,応力分布形状の違いは小さいが,応力の大きさが異なる.応力分布による固有振動数の変化については,モードごとに固有振動数の変化が異なり,振動数が低下するモード,変化しないモード,上昇するモードが存在する.その結果,局部的塑性加工を施すと複数のモードの固有振動数が近くなる場合が現れ,周波数応答において大きなピークが点在する.さらに,そのピークにおいては複数のモードが重なるために放射効率が変化する.これらが,シンバル調音における局部的塑性加工の効果であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究目的である音響放射効率の高い振動モード形状の明確化と局部的塑性加工による振動・放射音の変化予測法の開発は達成できた.さらに,開発した振動・放射音の変化予測法を用いて,局部的塑性加工がシンバルの振動・放射音特性に及ぼす影響を調べることで,シンバル調音における局部的塑性加工の工学的な意味を明らかにすることができた.したがって,おおむね順調に進展していると評価できる.ただし,局部的塑性加工により生じる板厚変化の影響および局部的塑性加工の位置とシンバルの振動・放射音特性の関係はまだ十分には明確になっていない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,シンバルの振動・放射音特性のばらつきが小さくなる局部的塑性加工法を明らかにするために,ハンマー加工(従来法)の代わりに汎用のプレス機械を用いて局部的塑性変形を与え,加工法の違いが残留応力,振動・放射音特性に及ぼす影響を調べる.加えて,平成27年度で検討が十分ではなかった局部的塑性加工により生じる板厚変化の影響および局部的塑性加工の位置と振動・放射音特性の関係を,プレス加工による局部的塑性加工を用いて,実験的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
平成27年度の計画では,局部的塑性加工の位置が振動・音響特性に及ぼす影響を実験的に検討するために,種々の加工条件で局部的塑性加工を施したシンバルの購入および振動実験用冶具の製作を予定していたが,指定した加工条件のシンバルを製造・購入することが困難であった.そこで,平成28年度に取り組むプレス加工で局部的塑性変形を与える調音法を用いて,局部的塑性加工の位置が振動・放射音特性に及ぼす影響を実験的に検討する.そこで,平成27年度の予算の一部を平成28年度に繰り越すこととした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に,ハンマー加工(従来法)の代わりにプレス加工で局部的塑性変形を与え,加工法の違い,さらに加工位置の違いが残留応力,振動・放射音特性に及ぼす影響を調べる.平成27年度未使用分は,局部的塑性変形を与える前のシンバルの購入および振動実験用冶具の製作に使用する.さらに,プレス加工用金型の製作および計測器の購入が平成28年度の計画予算では不足する可能性があるので,平成27年度未使用分の一部を充当する.
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Research Products
(5 results)