2016 Fiscal Year Research-status Report
原子レベル平坦ナノ積層膜による強誘電トンネル効果の解明と新規メモリ素子の実現
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15K05999
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西田 貴司 福岡大学, 工学部, 教授 (80314540)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強誘電トンネル効果 / スパッタ法 / ナノ結晶 / 次世代メモリ / 強誘電体メモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
誘電材料をナノレベルで超薄膜にするとトンネル効果が起こるが、ここで誘電体として酸化物誘電体のようなイオン結晶を導入すると結晶場の効果がトンネル電流に影響を与える。もし、イオン結晶が強誘電体や圧電体、高誘電体であれば電流が電気分極に依存する特異な効果が見いだされている。この現象はナノサイズの超微細かつ高耐久の次世代メモリ素子への応用が期待されている。しかし、この新規のトンネル効果(強誘電トンネル効果)は電極材料つまり界面の影響を受けるなど、その物理機構は未解明の部分が多く、 現象解明に興味が集まるともに、さらにそれを活用してデバイス応用の推進も渇望されている。 本研究では、新開発した高精度なスパッタ成膜手法を活用したナノ結晶多層構造の育成技術を開発するとともに、理想的な品質かつよく制御された材料界面でのトンネル接合での分析による現象に関する知見の蓄積を行い、最終的には現象の解明とデバイス応用指針の獲得を目指す。
初年度はZnOナノ結晶の成長制御と高品質化が得られたので、次年度(平成28年度)は他材料を含む積層化に取り組んだ。まず、電極膜であるPtの平坦膜形成を試み、ナノ結晶の規則的集合体を形成することができ、結果としてナノレベルでの超平坦膜を得ることができた。これについては、近日、学会へ発表予定である。また、このPtナノ膜を含めたZnO/Pt, PZT/ZnO/Pt積層構造についても育成し、表面物性についての評価を行いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は積層膜として、ZnO, PZTに加えPt, Irといった金属ナノ薄膜の成長を種々の条件で試みた。 その結果、本研究の新規手法である運動量制御形スパッタ法は成長制御に有効であることが分かったが、 金属膜の場合は成長様式が異なると共に、結晶サイズが小さくなり気味でナノ構造の評価に手間取った。 それについては測定技術の改良と向上によりクリアでき、技術と知見も蓄積したため、 積層膜の実現については少し遅れ気味なものの、おおむね期待の範囲の進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はさらに積層膜を安定形成し、その電気的特性の解明に取り組む方針である。電気測定系は特に、超微弱電流測定システムの構築を進めているところであるので、それと組み合わせることで、強誘電トンネル素子の特性の解明と応用に資するデータの取得につなげる。 特に、各ナノ構造のサイズ効果(粒径、厚さ)、材質(Pt, ZnO, Ir)が系統的に明らかにできそうである。一方、近年注目の材料としてナノサイズHfOxが現れており、研究に余力があればそちらも検討の対象とする。
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Causes of Carryover |
一昨年度は組成分析装置の故障のため実験が遅れ、昨年度は大幅な繰越金が発生した。一方で、昨年は研究の促進のため大きな出費があり、昨年度は年度受入分以上に支出した。しかし、一昨年の繰越金すべてを消化するにはいたらず、また、積層構造の電気特性評価システムの構築についてはまだ完了しておらず、一部後回しになったため、繰越金が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度後回しとなった電気特性評価システムを完成させるために、繰越金を使用する計画である。
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